捧物SS

□秘密の花園
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ヨザックはぱらぱらとページを捲り、気に入ったデザインを見つけ明日から始まる休暇中に作る気満々で部屋に戻って行った。
それから、3日間で作り上げた力作である。通常なら、1日半もあれば出来上がるのだが今回は色々頑張ったのだ。そう、色々と。

鼻歌は更に陽気なものに変わり、思い出し笑いまでする不気味さで周囲は少しずつ距離を開け始めた。無論本人は気付いちゃいない。
フラフラと街を散策しているヨザックは、本来非番なのでいつもの緊張感はない。

ふふふ〜ん。これと色違いのドレスは坊ちゃんに着て貰わなきゃね。
こんなに可愛いんですもの〜

最早、お花が咲き乱れたヨザックの脳内は、誰がなんと言おうと呑気モード1色だった。
軽い足取りのヨザックの耳に届いた喧騒は、最初はどこか他人事に思え大して気にしても居なかったが、遠くに蹄の音をかすかに捉えた途端聞こえてきたのは、怒声と罵声と悲鳴だった。
一本隣の通りを駆け抜ける数頭の馬が見え、それらの乗り手は濃灰色のフードをすっぽりと被り、顔半分を布で巻き隠していた。見るからに、不審人物の集団は何人かの子供を抱えているのが見えた。

はぁ、マジですか。誘拐ですか…見ちゃったよ、連絡しねえと

その様子を見ながらぼんやりと考えていたヨザックの目の前を、さっきの仲間と思われる輩が通りすがった。その中に抱えられていた子供の中に、ここにいるはずのない人物の顔が見えた気がした。

いやぁ〜!!!ぼ、坊ちゃん?坊ちゃんてば、何で抱えられてるのぉ〜!!

変装したユーリが連れ去られるのを見つけてしまったヨザックは、真っ青な顔のまま走り去った方向を見据えていた。

ど、どうして、こんな所にいた?ってか、一人の訳がないよな。コンラッドはどうし…
あ、ヤツは昨日から視察に出ていたっけ。じゃ、今日は抜け出したのか…
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