《短編小説集》
□「ダイヤモンド・ダスト」
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外に出ると除雪車が歩道を綺麗にしていた。
もう少し歩けば墓地が見える。
すでに墓には花が供えられていた。
姉貴だ。
そして手にした焼酎を供え、手を合わせた。
帰り道に昨夜茉莉に会った場所に行ってみた。
土産物屋の通りを横に入った温泉に近い道。
彼女の姿がまだ目に焼き付いていた。
白いコートに緑色の長いスカート。毛糸のマフラーを巻いて空を見上げていた彼女。
雪を見ていたのか、それとも何か悲しいことがあったのか…。そんな気がした。
阿寒湖畔は凍りつき祭典をしている。
暇つぶしに見に行くことにした。
ワカサギ釣りやスケート、スノーモービルなどを貸し出している。
そこでどこかでよく聞いたことがある声に反応し、振り返った。
ワカサギ釣りの貸し出ししている人だった。
「おい、篤だろ?俺だよ、創。久し振りだなぁー!」
「あー、嘘!創?お前、東京に行ったんだろ?戻ってきたのか?えらくカッコつけて、スーツで来るか?」
「いや、スーツ好きなんだよ。所でお前、何やってんだ?」
「そこの旅館で働いてんだよ。冴子さんもな」
「姉貴が?そうだったのか…」
ここの町は狭い。篤なら茉莉の事を知っているかも知れない。
俺は早速、茉莉の特徴を教え尋ねてみた。
「う〜ん。俺らより年上か…、心当たり無くはないけどなぁ。白石の姉ちゃんは札幌へ嫁に行ったし、山下さんかな?確か30前の娘さんがいるって聞いたけど…」
「山下…?」