《短編小説集》
□「親 友」
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私は松本由季、高校二年生。
どっちかと言えば平凡以上、可愛いと自分でも思ってる。
自慢の二重パッチリな目に低くも高くもない鼻。
いつも鏡で口元を色々と動かして、リップの色と可愛く見える方法を考える。
何てったってライバルの多い根岸先輩を射止めようなんて無謀なことをしてるんだから。
髪だってちょっとカールさせて天パーで通してるんだから。
それにしても麻奈、遅いなぁー。遅刻するぞ!
教室内で窓際に座った由季は幼なじみで一番の親友である井上麻奈が始業時間ギリギリなのに登校してこないことにヤキモキしていた。
そう言えば、転校生今日来るって先生が言ってたなぁ…。
始業のベルが鳴ると同時に麻奈が教室に駆け込んできた。
「はぁ―!ギリギリセーフ!間に合った〜!」
麻奈は由季の後ろの席に座り、ため息をついた。
「もー、心配したんだから!」
由季が後ろを向きながら言う。
「スマンよ〜、兄貴がトイレ出てくるの遅いからさあ、毎日だよ。ったく、もぉ!」
麻奈は、長いストレートな髪をポニーテールにしたスポーツ好きな女の子。
私とは趣味さえ違うけど、何でも話し合える親友。お互いの家も近い。
あ、先生がやってきた。
転校生は…女の子だった。
「えー、今日から新しいクラスメイトになる楡礼(ニレイ)華恋(カレン)君だ」
「…よろしくお願いします」
教室内がざわめいた。