「マグノリアの咲く庭」
□4.導 線
1ページ/29ページ
長い夏休みも終わり、新学期が始まった。
先生から電話番号のメモを受け取ったが、電話する事もなく何も変わった事も起きなかった。
しかし沖田先生は始業式に来なかった。
いや、始業式所か一学期の終業式以来、一度も学校に来ていない。
昨年六年生を受け持っていた原田先生が、代わりに担任を務める事になった。
原田先生の話では体調を崩し暫く休職すると言う事らしい。
人気の高い先生だっただけに皆、嫌そうな顔をしていた。
原田先生は五十代の女の先生で厳しいので有名だ。
冗談など通用しないし笑顔も殆ど見た事がない。
抜き打ちでテストがあったり、鞄の中身をチェックしたりで、特に女子からかなりブーイングを受けている。
沖田先生が来なくなって一ヶ月以上が過ぎた。
余り休みが長いので、有志でお見舞いに行く事にした。
「お見舞い? そんな事しなくても大丈夫です。良くなられたらまた、戻って来られますから」
放課後、原田先生に相談しに行ったら即答で断られた。
僕等は校門の傍で話し合った。
その有志の中にいた丸山美咲が言っていた。
「夏休みの間、先生一回家に来たよ。お父さんに会いに来たみたい。詳しい事は知らないけど」
「何しに行ったんやろ」
朗が腕を組み、難しい顔をして考えていると、丸山がすました顔で答える。
「私のお父さん、大学の先生してるんだ。何だか良く分からないけど、超心理学の研究しているんだって」