戯言な戯れ事

□壱つの頼み事
1ページ/5ページ

とある一人の青年がホテルだった建物の中にいた。


「待ち合わせはここで合ってるはずですが……」


建物内は時間帯が夜な上に曇っているため、光が殆ど入らない。
なのでよほど近寄らないと他人の顔は見えそうにない。
しばらくその場にじっとしているとおもむろに、肩に掛けていた荷物を下ろし、中から日本刀を取り出す。


「お前、零崎だな?」


声質、背丈からしてどちらも男のようだ。


「是、と答えたら?」
「主の命の元、お前を捕獲する」


声をかけた青年が小太刀構え、零崎と呼ばれた青年も構える。


「なら、私は零崎を始めさせて頂きます」


そして、どちらともなく飛びかかった。


――キン! キキン! キン――


零崎が上段から切りかかれば、片手に持った太刀で受け、反対の太刀で突き刺そうとすれば、青年を蹴って距離をとる。
飛ばされた青年は空中で体制を整えて壁に着地した。
そして、そこを起点に零崎に向かって飛ぶ。
二人が再び刃を交えようとしたその時


「そこまで!」


何処からか白銀のデスサイズが飛んできて、二人の間に刺さった。


「邪魔、しないでくれないかな?」
「全くです。久しぶりの強者との殺戮でしたのに。この埋め合わせは必ずしてもらいますよ、鏡瞑」


デスサイズが飛んできた方向とは真逆の方角から白銀の髪の青年がやって来た。

「あれ? 君も鏡瞑君と知り合い?」


構えを解いた青年は零崎に尋ねた。


「はい。表でも裏でも何時も困らされてます」


そういった直後建物内に光が差し込み


「そいつは酷い言われようじゃのう」
「事実でしょう」
「なーんだ、やっぱり柳生君も暴力の世界の住人だったC〜。」


建物内にいる青年達を照らし出した。


「改めて自己紹介をさせて頂きます。私は柳生比呂士こと、零崎岶識。以後お見知りおきを」
「俺は闇口泥睡。表では芥川慈朗って呼ばれてるC〜。裏の友達が増えてうれC〜!」


柳生が刀を鞘に収め、来るときに持っていた荷物、ラケットバックに締まった。

「んで、鏡瞑君はなんで此処にいるC〜?」
「取りあえず、戯言使いの命令はなんじゃ?」
「んーと、『茶髪眼鏡の零崎を捕獲して此処に連れて行け』だC〜」
「………あんの馬鹿」


額に青筋を浮かべながら鏡瞑が呟く。


「ああ、泥睡君は人類最弱の使いでしたか」


そんな鏡瞑を知ってか知らずか一人、納得している岶識。


「いいか? アイツの捕獲は嘘じゃ。此処に連れて行け、だけが正解ぜよ。」
「主は嘘付かないC〜!」
「いんや、いーの馬鹿は俺並の嘘付きぜよ」
「じゃあ、それが嘘!」
「これは本当ナリ」
「嘘だC!」
「本当」
「嘘!」


客である岶識を余所に話が脱線していた。


いい加減にしなさい! 全くもう。それで、人類最弱は何処に連れて行けと?」
「岶識君、お母さん見たいだC〜。こっちだよ」


そういって建物から出て行く。
鏡瞑と岶識は泥睡の後を付いて行った。







.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ