戯言な戯れ事

□弐つの出会い
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その日の放課後、柳生は六角中に来ていた。
実は今朝解散する前に「六角中に来るように」と弔狙に言われていたのだ。
そして、謀ったかのように「合宿の資料を代わりに届けて欲しい」と顧問に頼まれていた為でもある。


「ここ、ですね。あの、済みません」


柳生は近くにいた少年に声をかけた。


「なんでしょうか………って柳生さん!?」
「私の事を知っていると言う事はテニス部の方ですか?」
「え? あ、はい! うわぁー、本物の柳生さんだぁー。」


見た感じ中一の少年は目を輝かせている。


「あの、テニス部の方はどちらに?」
「オジイならコートだと思いますよ。あの! 良かったら案内させて下さい!」
「それは是非お願いします」


という訳で柳生はその少年に案内されてテニスコートにやってきた。


「えっと、オジイはーっと」


柳生が見た感じ、顧問の先生らしき人は見当たらなかった。


「剣太郎、次サエと試合だろ?」


そんな中、つい最近聞いた声が聞こえた。


「亮さん! けど、どうしょう……柳生さんをオジイの所まで案内しないとだし……」
「だったら俺が変わるよ」
「ありがとう! 亮さん。柳生さん、ちょっと失礼しますね」


そういって案内してくれた少年はコートに入って行った。


「今朝ぶり。柳生さん」
「ええ。今朝ぶりですね、木更津さん」
「亮って呼んでよ。淳と混ざるし」
「それでは亮さん、顧問の所と『人類最古』の元まで案内してください。」
「クスクス、分かったよ。見ても驚かないでね?」


そう言うと、テニスコートから離れて学校から出て行く。
連れて行かれた場所は近場の小屋だった。


「ここは?」
「オジイの作業所。『人類最古』はこの中にいるよ」


そう言って亮は中に入る。柳生も後を追って入る。
中には一人の今にでも逝ってしまいそうな老人が机の上に正座して、お茶を啜っていた。


「オジイ、連れてきたよ。」
「彼が『人類最古』………」
「そう。そして、俺達六角中の顧問だよ」
「え?! 彼が顧問なんですか?!」
「クスクスクスクス」


机の上の老人、『人類最古』は何時か柳生の目の前に移動していた。
そして、震える指を柳生に向けて


「あ―――合格」


ただ一言だけ喋った。


「ちぇ。不合格なら面白かったのになー。クスクス」
「え? あ、はぁ、ありがとうございます………」


『人類最古』のテンポについていけてない柳生は少し戸惑っていた。


「そういえば、顧問にも用事があるって言ってたよね?」
「あ、はい。こちらテニス部の合同合宿に関する資料です」
「え、合宿やるなんて聞いてないよ?!」
「未だ先の事ですし、場所も未だ決まってないそうですよ」
「なんでぇ――零崎が持ってるの?」


渡された資料を受けとった『人類最古』は疑問を投げ掛けた。


「私は立海のレギュラーをやっていて、顧問の代わりにお届けに上がりました。」


「それにしても」と少し間を開けて


「一目で零崎と解るとは流石『人類最古』、と言った所ですね」
「凄いでしょ、うちのオジイ。あ、そろそろ戻らないと怪しまれるな」


完成したら届けるか連絡をする、といって亮は小屋から出ていった。


「なんでぇ―――零崎が、学生出来るるの?」


柳生も出ていこうとしたら、『人類最古』に呼び止められた。


「………それは………」


言いにくそうに言葉を濁らせる。


「それは、きっと……私が『詐欺師な紳士(ノットファントム)』だからじゃないですか?」


石凪の詐欺師ではないと解らない偽りの笑みを浮かべて回答した。


「それでは失礼します」


バタン――


「なんでぇ―――『詐欺師な紳士(ノットファントム)』が、生きてるの?」












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