戯言な戯れ事

□伍つの驚き
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――合宿二日目―――


柳生は岶識として朝から嫌な予感がしていた。


「柳生、どうしたの? 顔色が良くないけど……」
「幸村君……いえ、少々嫌な予感がしまして……」
「そうなんだ。その予感が外れるのを祈っているよ」
「有難うございます。さて、いい加減戻りませんと真田君に叱られてしまいますね」


この予感は程なく的中してしまう事をこの時点では誰も知るよしはなかった。
午前中の練習が終わり、食事をとる為に食堂に集まった時、ソレはやって来た。


「岶識〜いるか〜? あ、今は岶識じゃなくって比呂士か。かはは」


食堂に入って来たのはなんと部外者の人識だった。


「ひ、人識兄さん?! 何故こちらに?!」


柳達と食事を取っていた岶識は驚いて人識に駆け寄った。


「柳生の兄弟って妹が一人じゃなかったか?」
「俺のデータでも血縁者に兄と呼べる人物はいない………ふむ、興味深い」
「いや、兄弟に興味を持たなくてもいいだろぃ………」


岶識の去ったテーブルでこんな会話がされていると知らずに人識は用件を切り出した。


「お前と同い年の兄弟が増えた。ソイツも中学は卒業したいらしいから色々教えてやってくれ」
「はぁ。私だって遊びに此処まで来てるんじゃありませんよ?」
「解ってるって。道中色々教えたけど、飲み込みが早いから大丈夫だって」
「分かりましたよ。それで、お名前は?」
「名前は……なんつったけな……確か、徳川家の武将っぽい名前だった気が……」
「いえ、そちらではなく」
「あ、零崎名の方? そっちは『枢識』だ」
「枢識、ですか」


そうして、その枢識を待たせているという所に移動した。
するとそこには、この場にいない筈の見知った顔があった。


「待たせたな、枢識。こいつが話し「手塚君?! なぜ、手塚君がこちらに?!」……なんだ、知り合いだったのかよ」


世の中ってせめーな。と笑い声を上げる。


「それはこちらの台詞だ。人識さんに『家賊を紹介してやる』と言われて来たのだが」
「手塚君が枢識でしたか。では改めて自己紹介を。私の名前は零崎岶識、『詐欺師な紳士(ノットファントム)』とも呼ばれております」
「岶識、だな。一応、俺も。零崎枢識だ。昨日零崎になったばかりで何も知らないが宜しく頼む」
「取り敢えず零崎として無意識に人殺しをしない練習から始めましょう。うっかり殺人をしてしまったら部員も皆殺ししてしまいますからね」
「宜しく頼む。やぎゅっ……じゃなかった。岶識」


そうして二人は殺人衝動を堪える練習を始めた。





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