IFの世界 〜梔子隊編〜

□第九話
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「はぁ」


気晴らしに散歩をしていたが、晴れる事なくため息をついた。


「やっぱ、俺のせい………だよな」


花壇の前まで来ると腰を下ろす。
そして、周介と大切に育てている花達へと目線を近づけた。


「俺が純粋なノアだったら、俺達がこっちの世界に来なかったら、皆に迷惑かける事も無かったのに………。俺があっちで死んでおけば………!」
「そないな事言うたらアカンで」


いつの間にか傍に来ていた侑士が優しく宥めた。


「でも、でも、俺のせいで大勢の人が死んだ! カルロもブロートもシーカーも何度も何度も死にかけた! 皆だって背負わなくってもいい厄介事に巻き込まれた。それは全部俺のせいだ。俺がこの世界にさえ来なかったら………、俺が『零番目』の人格を持っていなかったら………」
「せやから、自分を責めたりしたらアカン」


幸村の隣に座り、同じく花を見ながら言葉を続ける。


「人が死ぬんは自然の摂理やし、仲間が傷付くんはいつも仲間の為や。うちらみたいな奴らなら尚更。それにな、厄介事やと思うとる奴はおらんで。南次郎なんか、エエ歳こいてはしゃいどったわ。『異世界に行ける』ゆうて」


花壇の中を四匹の蝶が飛び回る。


「『零番目』が何なんか知らんし、昔何あったかもしらん。俺かて、光がおらんかったら死神になっとらんで?」
「そうなの?」


意外そうに聞くと、一つ縦に首を振る。


「死神なんざ嫌いやったわ。やけど、今は大好きやで? 光と謙也がおるからやない。梔子隊の皆がおるからや。もちろん、精市もその一人やゆー事も忘れんとき」
「………ありがと、侑士」


花壇を飛んでいた蝶の数がいつの間にか20羽近くに増えていた。
いつもの様に優しい笑みを浮かべたのを確認すると、仕事に戻ろうと立ち上がる。


「そうそう、さっきちびっこ組が精市の昔話聞きたい言うて探しとったで」
「ちびっこ組?」
「リョーマやブン太達、六期だか八期入隊以降の面子事や。………まあ、こないな事言っとる俺は九期入隊やけど」


大袈裟に首を傾げながらため息をつく。


「くすっ」
「ほな、またな」
「うん」


侑士は来た道を戻り、幸村は花壇を飛び回る蝶に再び視線を戻した。
するとそこにいた蝶の替わりに幸村の精神世界と、ノア化した幸村に瓜二つな幻爽響がいた。


『けっ、何青臭い事で納得してんだか』
「ゾレアにも、セイにも、精市にも、家族の様な仲間がいるって再確認出来たからいいじゃん」
『俺にもそんな奴らいたか?』


幻爽響は元々ゾレアの能力そのものだった。
本来ならゾレアの消滅と共に消える筈だったのだが、死神になるというイレギュラーが発生した為、こうして生き残ったのだ。


「いたよ。『夢‐ロード‐』とかゾレアの事大好きだったじゃん」
『あいつは誰にでもあんなんだったぞ?』
「そう? 俺の時は敵意剥き出しだったよ?」
『なんだかな』
「フフッ」


どこか楽しそうに微笑むと、幻爽響に質問を投げ掛けた。


「あっちに戻りたい?」
『さぁ。俺はお前でもアイツでもねぇからな』


その答えに満足した様で、現実世界に戻ると侑士曰くちびっこ組を探し始めた。







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