捧げ物

□29292キリリク
1ページ/3ページ

「おい、仁王」
「におーセンパーイ」
「仁王」
「仁王、ちょっといいか?」


あれから数日、事あるごとにレギュラー陣は仁王を構う様になっていた。


「だああああああ!!!」
「少しは落ち着きなさい」
「じゃけえ、しつこか! うぜえ! ほっといてくれよ、マジで!」


息抜きの為に訪れていた教団の自室で仁王は吼えた。
言葉では宥めている柳生も、言いたい事を言わせる体制を見せている。


「確かに先生にまで手を回すのはやり過ぎな気もしますが……」
「入れ替わっとらんとやってられんぜよ」
「声でバレるから止めたまえ」


イノセンスが使えない状況を想定した武器を用意する為の準備をしていた手を止めて、二人は向き合う。


「彼らなりに心配してるのを分かってあげて下さい」
「それは分かってんじゃが、しつこくてかなわん」
「だったら、もっと違う嘘つけば良かったじゃないですか」
「医者に聞かれても困らなさそうなんがアレぐらいしか無かったんじゃよ」


ため息をつきながら、座っていたベットに倒れこむ。
真実を隠した嘘というのは、ただの嘘よりもバリエーションに限りが産まれてしまう。
仁王は長期を見据えた時につく嘘に破綻が起きない様、ほんの少しでも真実を混ぜる様にしているからだ。


「まったく、困った兄弟だ」
「ヒロ〜」


人が居ないのをいい事に、柳生の背中にへばりついた。
そんな仁王を、ため息をつきながらも受け入れた柳生は、作業を再開させた。





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ