IFの世界〜偽りの真〜

□第七話
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部活も終わり皆が帰る中、幸村は柳生を呼びとめた。
用件は勿論先ほどの続きである。


「とりあえず、『俺』と『私』のどちらの方が都合がいいですかね」
「んー、どっちでも良くね? 俺達は『一緒』だし」
「そうだね。柳生の素に近い方が楽でしょ」


その為、部室には柳生・幸村・赤也の三人しかいない。
なので前世と同じ口調にする様に促していた。


「んじゃ、お言葉に甘えて」


眼鏡を外して荒々しくベンチに腰掛ける。
柳生は眼鏡の有無で切り替えているらしく、動作の一つ一つが普段紳士と呼ばれている彼らしく無い物になっていた。


「今どんな感じよ」
「ふつーの人間と変わんないよ。普通に普通な生活が送れてる」
「そう言えば、俺が最後だってな? シークは誰なんだ?」
「ふふふっ、それは後でのお楽しみ」


楽しそうに笑う幸村を見て、こういう時は追求しても無意味だという事を思い出していた。


「それより柳生先輩、なんで性格を隠してんの?」
「今の親が、な」


苦笑気味に話す柳生に対し、赤也は首を捻る。


「いい親御さんじゃん。なのになんか問題でも?」
「『いい親御さん』だからこそだよ。ちゃんとした親から産まれる子って『紳士の私』と『捻くれた俺』、どっちだと思う?」


その説明で納得したらしく、赤也は軽く頷いている。


「しかも妹だなんて面倒なモンも出来ちまったしよ。変に真似されたら困るだろ」
「相変わらず嘘つきの癖にいい子だね」
「うっせ」
「わーん、お兄ちゃんがグレたー」


笑いながら幸村の影に隠れる。
そんな赤也に便乗して、幸村もわざとらしく柳生を責めた。


「お母さんはこんな子に育てた覚えはありません!」
「誰が母親だ。ってか、カルとはタメだろうが」
「そーでした。同い年が先輩って腹立つな」


実の所カルロの正確な誕生日は分かっていない。
しかし、カルロが拾われた年と双子の産まれた年が奇しくも同一であった事から、三人は同い年という事にしていた。


「そればっかしは諦めろ」
「ってか、俺も先輩だけど?」
「精市とは小学生の頃からだからいーの!」





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