IFの世界〜偽りの真〜

□第八話
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「赤也、せーくん起こしてきてくれる?」
「ふぁーい」


眠そうな目を擦りながら、幸村の部屋へと向かった。
幸村の部屋、と言っても赤也と同じ部屋ではあるが。


「せーいちー、朝だぞー。起きろー」


体を揺すりながら声をかけるも、頭まですっぽり覆ったままピクリともしない。


「精市? ぶちょー、起きろー! 幸村部長。起きてください」
「ん………?」
「セイ起きた? 母さんが朝飯出来たって」
「………」


赤也の問いかけに耳を貸さずに起き上がる。
いつもと違う様子の幸村に、赤也は警戒を強めた。


「お前、誰だ?」


幸村にしか見えない彼は、赤也の姿をみた瞬間にそんなことを呟いた。


「………精市じゃねえって事はゾレアか」


完全に起き上がった彼の額には、彼がノアであるという証が浮かび上がっている。


「ふぁっ。確かに俺はゾレアだ。けど、『まだ精市である』とも言えるぜ。えーっと、そうだ。赤也だ。」


眼を擦ったり、軽いストレッチをしながら辺りを見渡す。
そして、制服に手をかけた。


「これ、一回着てみたかったんだよなー」
「どういう、意味だ?」


幸村が気に入って使っている青いパジャマを脱ぎ捨てると、アイロンのかけられたワイシャツを羽織る。


「こうでいいのか? まんまの意味だよ。昔と違って今の俺達は表裏一体の存在。一つの魂に宿る二つの人格って所か」


ズボンも履き、初めてのネクタイに四苦八苦しながらも、喋り続ける。


「だからこの体は俺のものであると同時にアイツのもんでもあんの」


ネクタイを結ぶのは諦めたらしく、首からだらしなくぶら下げて部屋から出ていこうとした。


「ま、待て!」
「あ? 飯ぐらい食わせろよ」
「………だったらせめて聖痕は隠せ。それに、セイは無事なんだな?」
「そのうちひょっこり戻ってくんじゃね?」


幸村が普段テニスをする時に使うヘアーバンドを身に付け、改めて彼「ゾレア」は部屋を後にした。
複雑な感情を顔に浮かべた赤也を残して。



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