IFの世界〜偽りの真〜
□第九話
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コツコツ――――
人で賑わう校舎の中、まるで幽霊の様に彼は歩いていた。
目的を持って、しかし宛もなく。
まるで誰かを探すように辺りを見渡しながら、ゆっくりと。
「――でさー」
「どうなのよ―――」
「この間の――――けど」
「あり―ない―――ょ」
誰も彼の存在に気がつかない。
誰も彼に気が付けない。
「! 見つけた」
お目当ての人物を見つけた彼はニヤリと笑みを浮かべた。
楽しそうに。
愉しそうに。
お目当ての人物も人混みを気にすることなく、ずんずんと進んでゆく。
彼も見失わない様に、見つからない様について行く。
誰も居ない上へと。
邪魔者が入らない屋上へと。
「誰だか知らねえけど、何の様だ」
そこで漸くお目当ての人物、赤也が振り向いた。
殺意と悪意をその目に宿して。
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