梔子隊
□第一話
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〜視点Y〜
俺が目を覚ますと、見知らぬ場所にいた。
「こ、ここは?」
辺りを見渡すと時代劇に出てきそうなボロ長屋と、これまた時代劇に出てきそうな古着の着物を着た老人がいた。
「おお、気がつきましたか。ここは尸魂界の流魂街という所です」
「そう…? 俺は死んだはずじゃ……」
俺はそう呟きながら体を起こす。
「ええ。どうしてここに来たのかは存じ上げませぬが、ここはいわゆる“あの世”です」
と、いうことは……
「俺にはあの世界の住人になる権利があるって事……?」
そう思うと思わず、ほほが緩んだ。
目の前の老人に不思議そうに見られて、慌てていつもの部長としての俺に切り替えた。
「ご丁寧にありがとうございました。それでは、俺はこれで……」
そう言ってこの小屋から出て行こうとしたその時
ぐぅぅぅぅぅ
恥ずかしい事に、俺のお腹が鳴った。
「もしかして、お腹がすいたのですか?」
「すみません。お聞き苦しいものを」
「いえいえ、とんでもない! ここでお腹がすくという事は霊圧を持っているという事。もしかしたら死神になれるかもしれませんぞ!」
「死神? 死神って死者の魂を狩るという、あの?」
「それは生きている人間の妄想だそうで。本当の死神の仕事は虚と呼ばれている悪霊を退治して、整と呼ばれる我々の様な死んだ人間をここに連れてくる事だと、孫が言っておりましたわ」
立って話すのもアレだと思い寝かされていた布団の上に俺は腰を下ろす。
「お孫さんがいらっしゃるんですか」
「血は繋がっておりませんが大事な家族です」
老人の瞳が細く伸びる。
おそらくお孫さんの事を思い出しているのだろう。
「そういえば、貴方のお名前を未だ聞いていませんでしたね」
「俺は幸村精市です。おじいさんは?」
「儂は甲斐十次郎といいます。もし行く所がないようでしたらここでくらしませぬか?」
俺は少し考えた後、答えを出した
「では、お言葉に甘えて」
この時はまさかこの日の夜に行きたい所が出来るとは思ってもみなかった。
〜視点Y 終〜
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