梔子隊

□第二話
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「まず、幸村君を連れてきた理由は皆が考えてるように、幸村君なら仲間になれそうだからだ」


室町が人数分のお茶を淹れながら丸井が話しだした。


「そんで、俺達が感じてた違和感の正体が異世界の人間だかららしい」
「人間って言っても普通じゃなかったけどね」
「それって、なにか特別な力を持ってたって事かい?」


幸村の注釈に周助が質問する。


「ああ。『ノアの一族』って呼ばれている特殊な力を持った一族の一人だったんだ。その上俺の場合は少し特殊で、ノアの一族から逃げてた。」
「同じ一族から?」


眠たげな眼を擦って芥川が疑問を口にする


「うん。そして偶然出会った三人の仲間と一緒にこの世界に逃げ延びたんだ。だけど、それでも追いかけ来られてね。仲間の一人の力でノアの力を殺して貰ったんだけど、そのかわりに寿命でぽっくりって訳さ」


どこか懐かしそうで寂しそうな眼をして自分の事を語った。


「ってことは現世に後三人、異世界人いるってことですか?」


祐太が申し訳なさげに手をあげる


「うーん……彼らはこの世界の人間として生まれ直してるから厳密には異世界人は俺一人かな……」


室町も手をあげる


「寿命って、今何歳なの?」
「何歳だろ……多分、ブン太より上かな?」
「死神より長生き?! 人間じゃないさね……」
「『ノアの一族』としての能力の一つが不老だっただけだよ。だからこの外見で寿命なんだ。後は何が聞きたい?」


しばらく考えてると謙也が勢いよく手をあげた。


「はいはい!」
「ふふっ。はい、忍足謙也君」


赤也の様な勢いに思わず、笑みを漏らして謙也を指す


「仲間ってどないな奴なん?」
「一人は悪戯大好きで、一人はお父さんみたいで、一人は子供っぽいかな」


指を折りながら三人の特徴を答える。


「なんか、仁王と真田君と赤也みたいな三人なんだな」
「ふふっ、そうだね。それで、悪戯大好きっ子とお父さんがそっくりな双子で」
「亮兄と淳兄と似てる様で似てないんだ……」
「三人とも皆知ってる人だよ」
「「まじで?!」」


丸井と謙也が声を合わせて驚いた。
声はあげなかったが、他のメンバーも驚いている。


「うん。三人がテニスやってるから俺も始めたんだ」
「それで部長って凄いね……」


不二の呟きに死神は皆頷いた。


「んで、それよりよぃ、幸村君を仲間にしてもいいか?」


丸井の質問に


「僕はいいよ」
「俺もかまへんで」


席官の二人がOKを出した。
最後の一人である芥川だけは返事を返さない事に疑問をもった甲斐が芥川に声をかける


「後はジローだけやし……ジロー? って、起きろ!」


隣で船を漕いでいた芥川を叩き起こす。


「あー、うー……話は、聞こえてた…C」
「んで、どっちさね」
「いい……よ。ごめん、徹夜明けだから、もう……テンションが……zzzzz」


眠気が限界を突破してしまった様で、そのまま寝てしまった。


「あー、昨日の合同演習ジローは十一番隊担当だったから……。ごめん、ちょっと布団に入れてくる」


室町が芥川を抱えて客間を出て行った。

「あ、せや。俺、他のメンバーに幸村ん事伝えてくるわ」


それを合図にこの場は一旦お開きにする事になって部屋から出て行った。
二人っきりになったことで幸村は気になっていた事を丸井に聞くことにした。


「部活の方はどうだい? 俺がいなくてもちゃんとやってる?」
「おう。真田君が部長で柳君が副部長になってるぜぃ。でも最近よ……」


言ってもいいのか悩みながら言葉を続けた。


「赤也が……大泣きしてた時があったんだよぃ。んで、柳生も泣いてるし、仁王も様子がおかしいし……極めつけが赤也が真田君に『真田副部長』って言ったんだよぃ。そん時、俺は『なんで真田君が副部長なんだよぃ、部長だろぃ?』って感じの事を言ったんだ。したら、赤也達はすんげー驚いてて……今ならその理由はわかるんだけどよ。んでその日以来、特に赤也が練習に一層励むようになってよ……それが見てるこっちがすんごく不安にさせる位無茶苦茶で……なあ、さっき言った『三人の仲間』って仁王と柳生と赤也の事か?」


幸村の顔をしっかりと見ながら丸井は聞いた。


「そうじゃねーと辻褄があわねー事が多いんだよぃ! 新学期が始まってからが特に! 着替えをしてても、刀傷とか、戦闘しないと絶対に出来ない傷が増えてて心配なんだよぃ!」


幸村は沈黙を保ったまま丸井の事を見返す。
丸井は真剣に、部活の先輩として後輩の心配をしている様に見えた。





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