梔子隊

□第五話
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次の日幸村が元いたクラス、つまり仁王と丸井のクラスに一人の転校生がやって来た。


「な、なんで……」


その転校生を見た仁王は詐欺師と思えない程、動揺をあらわにした。
なぜなら―――


「親の都合上、こんな時期になってしまいましたが宜しくお願いします」
「席は仁王、あの銀髪の奴の隣な」
「分かりました」


そう言って指定された席に座る転校生。


「宜しく、仁王。いや、シーカー」
「なんで、セイがここにおると!?」


そう、仁王でも動揺する転校生とは幸村精市その人だったのだ。


「その話しはカルロとブロートにもしたいから昼休みにね。あと、紹介したい人がいるって伝えといて」
「…………繋いでやるから自分で言いんしゃい」


色々考えを巡らせた結果、早口に詩歌を紡ぐと机に伏してしまった。


『マサ? どうかしましたか?』
『柳生先輩?』
『久しぶりだね、二人とも』
『この声は………!』
『部長!? なんで、なんで、部長が!?』
『フフフッ。その事について話しがしたいから、昼休みに部室に集まって欲しいんだ』
『もちろんッス!』
『柳生もいいね?』
『はい! もちろんです』

嬉しそうに眼を細めると、仁王を突いた。


「仁王、もう切っていいよ」
「ん」


二人の後ろの席である丸井は不思議そうに首を傾げる。
そして、一時間目が終わりクラスの女子が幸村の回りに集まってきた。
いや、幸村の中性的な容姿から、男子生徒も集まっている。


「幸村って何処から来たの?」
「部活とか、何入るか決めた?」
「さっき仁王が驚いてたけど、知り合い?」
「彼女とかいるの?」
「趣味は何?」


幸村が答える間もなく、矢継ぎ早に質問を浴びせてゆく。
困ったような表情をした幸村を助けようと丸井が口を開いた。


「こいつは――」
「幸村はイギリスの方にいた親戚ナリ。日本に帰ってきとると聞いとらんかったからのう。部活はやっぱ、テニスか?」


当たり障りの無い嘘をつらつらと、幸村と丸井の代わりに仁王が答えた。


(あ、仁王は覚えてるんだっけ)
「うん。最近やれてないから腕が落ちてないか心配だよ」
「じゃったら放課後に試合しようぜ」
「もちろん」


そこでチャイムが鳴り、皆席に戻っていった。







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