梔子隊

□第五話
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そして昼休み―――


仁王が幸村に学校内を案内するという名目で連れだし、屋上にやって来る。
そこにはもうすでに赤也と柳生が待ち構えていた。


「セイ………セイー!!」


幸村の姿を見た瞬間、赤也は感極まって泣きながら幸村に抱き着いた。


「また、お会い出来るとは…………」


柳生も嬉しそうに瞳を濡らす。


「なあ、幸村よ」
「なんだい? 仁王」


朝、顔を合わせてから無言を貫いていた仁王が口を開く。


「お前さんは何故ここにいる。まさか、ゾレアが未だ………」


考えたくもない、最悪の結果を迎えたのか確かめる為に。


「!? そん、な」


だが、幸村は優しく首を横に振る。


「それはないよ。俺の中からちゃんとゾレアは消えてる」


次の可能性を今度は柳生が幸村に尋ねた。


「だったら、本来なら異世界の存在である我々は正しく死ぬ事が出来ないのですか?」


再び首を横に振る


「ソレも違うよ。俺はちゃんと死んだ。その死んだ事に対する説明にある人を呼び―――」
「結界が破られた!?」


柳生が幸村の発言を遮り、立ち上がる。
それと同時に硝子が砕ける様な音がした。


「何!?」
「強度は?」
「人避け用なので一番弱いです」
「あ、ちょ、三人とも………」


幸村の言葉に耳を貸さず、何時でもイノセンスを発動出来るように構える。
だが、そこにやって来たのは敵ではなく、見慣れた仲間だった。


「ふぃー、俺結界破るの苦手なんだよぃ。しかも屋上に辿り着けないしよ」
「ま、丸井先輩!?」


予想外の来客に驚く赤也。
だが、三人は警戒を続ける。


「何の用じゃ? ブン公。お前さん、人間じゃないな。幽霊に似た感じがするぜよ」
「言われてみれば、幸村君から感じる、今までに無い感じと同じですね。」


柳生も気配を探ると丸井と幸村から同じ気配を感じた。


「三人とも、ブン太は俺がここに戻って来れる様にしてくれたんだ。だから敵ではないよ」


幸村が優しく宥める。
すると、若干唸りながらも赤也は警戒を解いた。


「…………部長がそう言うなら」
「長年の付き合いじゃ。信頼はせんが、信用はしちゃる」
「私も二人と同意見です」


軽く頬を掻きながらポツリと漏らした。


「これって、少なくとも敵じゃないって分かってくれたのか?」
「ごめんよ、ブン太。警戒心が強くって。これも全部俺の為なんだ」


苦笑を浮かべて手招きをして丸井を幸村の隣に座らせる。


「柳生、人払いをお願い。さっきのと同じでいいから」
「分かりました」


軽く深呼吸をして人避けの結界を紡ぐ。







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