梔子隊

□第七話
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「もう一つの名前で呼びかけろ!」


仁王が幸村にそう呼びかける。


「ありがとう、仁王」


幸村は斬魄刀を鞘に戻す。
そして、赤也に向かって手の平を向ける。


「縛道の1、塞!」


目に見えない鎖で、赤也の四肢を拘束する。


「カルロ、俺が死んだ時に泣いてくれたんだってね?」


拘束から逃れようと赤也は必死にもがく。
そんな赤也を優しくも強く抱きしめる。


「ありがとう、カルロ。俺の家族になってくれて。カルロがいなかったら、シーカーとブロードの三人家族だったら今の俺はいない。だから帰っておいで? カルロ」
「…で……け」
「カルロ?」
「俺の中から……出てけ!!」


赤也が叫ぶと今までの抵抗が嘘の様に大人しくなり、


「ありがとう、セイ」


その一言を残して赤也は気を失った。


「お礼を言うのは俺の方だよ、カルロ……いや、赤也」


赤也の拘束を解き、仁王と柳生の元まで赤也を運ぶ。


「アイツは何者だったんだ………?」
「分からない。」


仁王の疑問に幸村は首を横にふる。
付き合いの長い者にしか分からない怒りをあらわにしながら。


「……ちょっと虚退治に行ってくる」
「その必要はないぜぃ」


調度虚退治から帰って来た丸井と周助は四人の元に近づく。


「ジローか十次を呼んでくる」
「その必要はなかと」


携帯の形をした伝令神器を取り出した周助を仁王が止める。


「精神疲労が激しいから今は眠っとう。じゃから2、3日寝かせとけば大丈夫ナリ」
「へぇー。専門じゃないのに良く解るね」
「逆によう専門じゃないと解ったのう」


周助が感心したように仁王に言ったのだが、逆に警戒心を持たれて質問されてしまった。


「強いって言えばさっき見た戦い方で、かな? それと、年寄りの勘」
「さよけ。………それと、死神っちゅうんは皆見た目と歳が違うんか?」


曖昧な回答に満足はしてはいないが、納得はしたらしい。
そしてもう一つ質問をぶつけた。


「え? うん。一度死んでるから寿命は無いに等しいよ」
「…………そうか」


仁王の想いを知らない周介は自分達の常識を伝える。


「仁王、俺の事は気にしないでいいよ。昔と違って今度は皆一緒だし」


母性を感じる微笑みを浮かべて、仁王を諭す。


「じゃけど、セイにとっての『死』は………!」
「しっ、柳生が起きちゃうよ。仁王の家はこの辺だっけ?」
(あれ? 仁王ってよぃ、こんなに感情的な奴だったか?)


仁王の言葉を遮り、幸村が言葉を紡ぐ。
その先は誰にも聞かれたく無いと言わんばかりに。


「………幸村ん家の方が近いナリ」
「俺の家? もうないんじゃ………」
「記憶と一緒に戻しといたぜよ」
「ありがとう、二人とも」


眠っている柳生の頭を優しく撫でる。
そして、赤也を抱き上げて皆を自宅へと案内した。





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