梔子隊
□第九話
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何もない暗闇
いや、暗闇と表現するには明るすぎる
そんな空間に俺は一人佇んでいた
「こうして会うのは初めまして、か? 『セイ・ヴァルディア』」
最初っからそこにいるのに今そこに現れた男は幸村にとても酷似していた
肌の色が黒く、額に十字の傷が横に並んでいる以外は
「お前は……『ゾレア』!!」
「『ゾレア』……『ゾレア』ねぇ。ククク」
何が面白いのかもう一人のは仲間の一人がペテンに掛ける時のような笑いをこぼす
「今の俺の名前は『―――』だ」
聞こえない
前後の声は聞こえたから聴覚をやられた訳ではないらしい
「その様子だと、名前が聞こえてねぇ様だな」
まあいい
もう一人の俺が一度言葉を区切る
「俺の力に勝てたらもう一度教えてやる。それが最後だ。それで俺の名前が聞こえなかったらお前の体をもう一度いただく」
「いいよ」
俺は迷わずに答える
本当は迷うべきだったのかもしれない
俺にとって不利な条件を飲む事を
だが迷わなかった
それはきっと、頼れる仲間が三人から一気に増えたからだろう
「ぎゃははははははは。成立、だな」
俺の意識は段々と薄れていった
夢から覚めるように一気に
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