梔子隊

□第九話
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昼食を取ろうと屋上に向かう途中、急に幸村が足を止めた。


「どうした? 精市」
「いや、なんでもない」


柳にそれだけ言うとさっさと屋上へ向かう。
屋上には丸井の義魂玉「フミ」を含め全員そろっていた。


「おや、俺達が最後みたいだね」
「柳達も来た事だし、食うか」


食前の挨拶をする者、せずにお弁当に手を付ける者、各々の性格が表れる。


「仁王が弁当なのは珍しいな」
「いつもは面倒じゃから作らんだけナリ」


くだらない会話をしながらお弁当を食べる。
一瞬幸村の表情が曇った事に気がつかずに。
お弁当を食べ終えた幸村は己の義魂玉「イチ」と交代してそっと屋上を離れた。


「まさか、味覚が……? じゃあ、アレは現実だったって事………?」


人気のいない所にまで来ると、心配したのか先ほどの仮面の死神の一人がやってきた。


「どうしたんさー?」
「ねえ裕次郎、何か強烈な味のする物持ってない?」
「いきなりなんなんさー」


そういいながらも懐から一つのキャラメルを出す。


「ゴーヤー味のキャラメルならあるさー。これは食いもんじゃないさー」


それを受け取った幸村は迷わず口に含む。
苦そうな表情を浮かべる甲斐をよそに幸村は驚愕の表情を浮かべた。


「やっぱり、味覚が……って事は五感を奪うって意味なのか?」
「精市?」
「裕次郎、ちょっと俺、時々使い物にならないかもしれない」
「は?」


幸村の告白に甲斐は理解が出来ずに変な顔になる。
仮面を付けると甲斐を置いて何処かへと去ってしまった。




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