戯言な戯れ事
□淕つの軋み
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次の日
「亮さん、ちょっといいッスか?」
「どうかした? ダビデ」
ダビデに呼ばれて人気のない所に呼び出された。
「昨日の事なんスけど」
「昨日?」
「昨日なんか、怪しい人と争ってませんでした?」
「………もしかして、俺位髪が長くて拘束服着てた?」
しばらく考えた後…………いや、考えた振りをした後、出夢の特徴をあげた。
「ッス」
「あーあ、なーんだ。見られてたんだ。アイツは出夢って言って俺達の親戚なんだ。あれは遊んでただけ。大型犬にじゃれつかれてた様なものだよ」
「そう、なんですか? そうには……」
「そうなの。他には何か見た?」
「いえ……」
「そう、ならもういいね。そろそろ戻らないとサエ達が心配する」
途中で氷のように冷たい視線をダビデに向け、先に皆の元に戻っていった。
「……遊んでただけならなんで、あんなに恐ろしいんですか? なんで、あんなに怖いんですか? なんで、動けなくなるんですか? なんで恐怖を感じたんですか? なんで、あんなに不動でいられたんですか? なんで殺されるって思ったんですか? なんで、あんなに冷たい眼をしていたんですか? なんで、それを俺に向けるんですか?」
ダビデの疑問は空に消えて行った。
皆が練習をしているその時、氷帝に一人の男性が近づいてきた。
「すみません」
「アーン? 此処は関係者以外立入禁止だぞ」
「いえ、一つ確認したいのですが、『跡部景吾』は貴方で?」
「ああ、そうだが?」
「なら…………死んでください」
キラリと刃が光り、派手に血が飛び散る。
「なん……だ………? これ………」
そして、何が起きたか解らずにその場に倒れ込んだ。
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