IFの世界 〜梔子隊編〜

□第九話
2ページ/5ページ

コムイの計らいで死神四人と仁王・柳生は彼等の世界で行方不明となっている周介を探しにハニルへと来ていた。


『こっちにはいないっぽい』
「そっか、こっちも手がかり無し。一度皆と合流する前に合流しようぜ」
『了解』


桜井は通話終了ボタンを押して、伝令信機をしまう。
南次郎と科学班の技術を結集した結果、この世界でも伝令信機が使える様になったのだ。


「そちらは何かありましたか?」
「いんや、亮の方も進展ゼロ。柳生さんの方は?」
「来る途中にあったお城を見てきました。懐かしいだけで他には何も」


実はこのハニルという土地、名前自体は変わってしまったがジョーンズ兄弟が生まれ、セイと出会い、カルロと家族になった場所。
先程柳生が見に行った城はセイの最後の家だった。


「お待たせー」
「おし、十次達と合流すっか」
「………先に行ってて下さい。見ておきたい場所が一カ所あるのを忘れてました」
「秘密基地か何か? クスクス」
「似たような物です」


営業用スマイルを浮かべると、今は亡き我が家の方へと歩いて行った。
暫く歩いていると、良く知った見慣れない人が佇んでいた。


「エクソシスト自ら一人になってくれるとは殊勝な心掛けだな」
「私達は特別ノアの一族が嫌いなだけですから、お気になさらず」


そう言って柳生と対峙したのはティキ・ミックと、彼の影に隠れて良く見えない小柄な人間だった。


「『反則奥義(チート・オブ・チート)』発動」
「たっく、零番目の家を見に来たってだけなのにな」


鞭の様に鎖をしならせ、ティキへと一撃を浴びせようとした。
だが、その一撃は隠れていた人間が日本刀で弾く事によって防がれてしまう。


「少し無用心なんじゃないの? ティキ・ミック卿」
「サンキュー、シュースケ」
「この感じ………まさかノアの味方とは。面倒な事になりましたね」


二人から距離を保ちながら思わず呟く。
そして、改めて仮面を付けた小柄な人間に向かって声をかけた。


「こういう形では始めましてですね。私の名前は柳生比呂士。ノアでも教団の味方でもない、『零番目』ではない『零番目』の味方です。以後お見知りおきを」
「それじゃ、僕も挨拶しないとね。僕は不二周介。ノアの皆とは利害関係が一致しただけのただの迷子な死神だよ」


そう言って、仮面を外す。
本来なら抑えられている筈の霊圧が溢れ出し、近くにいたティキは思わずその場に片膝をついてしまう。


「!?」
「………なん、だよ………これ……!」


柳生はある程度距離をとっていた為、その霊圧に堪えきった。


「相変わらず、その膨大な霊圧とやらは凄いですね」
「これでも5割位に抑えてるんだよ? それに、仁王と柳生も同じ位の力をもってるよね」
「我々の力は比較対象がいませんから」


霊圧に苦しんでるティキを横目に二人は呑気に対話をする。
もう二言三言言葉を交わすと、周介は再び仮面を付けた。


「それでは私はこれで」
「またね」
「あ、ちょ、待った!」


冷や汗を零しながら柳生を引き止める。


「何ですか?」
「お前は………『何者』?」
「『零番目』最大な敵であり、最大な味方です。それか、ゾレアと敵対したセイの家族。それ以外の説明が出来ません」


改めて二人に背を向けると、その場を立ち去った。









.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ