IFの世界のIFの話

□再会〜赤也と幸村の場合〜
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部屋の奥から一人の青年が出て来た。


「ルーディーを倒したの?」

青年はカルロに尋ねた。


「ルーディー? ああ、さっき倒したこの館の主か。噂の割には弱すぎ」
「そう。けど、彼が弱いのは俺も同感だな」


どこを見ているのかなんて解らない。
こっちを見ているはずなのに何も見ていない。
そんな青年にカルロは聞いた。


「アンタの方が強いの?」


青年はそれでもカルロを見ながら見ていなかった。


「強いかどうかやってみる? 俺、ルーディー以外の人間を知らないから強さが解らないんだ」


青年にとってみれば本音で真実であるがカルロにとってそれはただの挑発だった。


「潰す!」







パコーン パコーン パコーン パコーン


「(ああ、あの時と一緒だ。俺とカルロが始めて会った日と)………フフッ」
「どうした? 精市。やけに楽しそうだが」
「いや、ちょっと懐かしい事を思い出してね」


現在コートでは真田と少年が第二試合をしている。
第一試合は柳対少年で結果は柳の圧勝。きっと第二試合も同じだろう。


「そうか」
「ゲームセット! ウォンバイ真田6‐0」


悔しそうにコートにはいつくばっている少年をほっといて真田が戻ってきた。


「彼、どうだった?」
「うむ、悪くはない。これからの伸びしろも大きそうだ」
「俺と同意見か」
「(だって彼はカルロだ。しかも出会ったばかりの頃の。)勝ってもらっちゃ困るよ。(カルロが強くなる為に)」
「当然だ。だから幸村、全力で行け」


俺の本心を知らない真田が俺を応援してくれる。
そして、コートに入り、


「立ちなよ。次は俺だ」
「はっ、はっ、はっ、はっ。っ………!! 潰す………!」


全力で叩きのめした。


「くっそ! ぜってー倒してやるからな!」
「威勢がいいな」
「ふん、楽しみな一年だ」
「君、名前は?」


ぶざまにはいつくばる少年を見下ろしながら俺は聞いた。


「…………切原赤也」
「赤也か、俺は幸村精市。何時までも待ってるから此処まで昇っておいで」


さあ! 練習再開だよ! と声を上げて俺はこの場を去る。
此処まで昇っておいで。あの頃よりもずっとずっと高い此処まで。
きっとそうすれば俺の事、思い出してくれるよね? カルロ。


「一年相手に容赦ないのぅ。うちの三強は」
「フフッ。彼の為だよ」


ブロードの様な髪の色をしたシーカーの雰囲気がする少年、仁王が声をかけてきた。


「それより、髪染めるの止めたら?」
「じゃからコイツは地毛じゃ。染めとらん」
「仁王君! お喋りしてないで練習再開しますよ!」


近くにいたらしいシーカーの様な髪の色をしたブロードみたいな雰囲気がする少年、柳生が仁王に声をかける。


「へいへい。んじゃ、また後でな。“セイ”」
「ほら、行きますよ“シーカー”」
「わっちょっ、そげに引っ張らんでもいいじゃろ“ブロード”」


そして二人は驚いている俺を置いて練習へと戻っていく。


「…………この運命も君達の仕業かい?」


そう呟くと俺も練習に戻った。
戦いの日々が再びやって来ない事を願って。
またもう一度、四人で笑い会えるその日を信じて。












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