IFの世界のIFの話

□祐太誕生日記念
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俺の兄貴ははっきり言って天才だ。


狂おしい程に。


それは俺が生まれる前から決まっていて、兄貴が生まれる前から覆せない事実で真実。
だから兄貴が好きな物程壊したくなるのも、死にたがっているのも、死にたくても天才としての本能で生き延びてしまうのも、全部引っくるめて知っているし、理解している。
だから兄貴が嫌いか、と聞かれたら否と答える。
だってそれは兄弟が太っていたり、先天的な病気を患わっていたりするのと一緒だから。
天才じゃない兄貴は兄貴じゃない。
いや、普通の天才に成り下がった兄貴は兄貴と呼びたくもない。
赤ん坊の頃から兄貴は俺の事が好きだった。
数え切れない位、兄貴に殺されかけたのがその証拠だろう。
それでも兄貴を嫌いにはならない。
兄貴のそれは赤ちゃんがぐずるのと同じだから。
中学に上がった時、特に希望もなかったから兄貴と同じ青学に通う事にした。
部活も、兄貴がやってるからって理由でテニス部に入った。
兄貴はテニス部に入ると同時期に色んな情報を集めだしていた。
理由は聞いたことないけど、多分どうやったら死ねるか知りたかったからだと思う。
俺の事をクラスの奴や先輩が『天才不二周助の弟』と呼ぶのは正直言って誇らしかったと同時に嫌だった。
彼等は『普通の天才』として称賛しているから。
兄貴は普通の天才なんかじゃないと知っているからこそ、普通の天才として称賛する彼等が嫌いだった。


狂おしい程に


そんな中、俺に引き抜きの話が来た。
兄貴に相談すると「いいんじゃない? それに、裕太をこれ以上壊したくない………」
俺に手当をしながら悲しそうにそう言った。
兄貴には笑ってて欲しいのに。
俺はルドルフに転入して、裏の世界を知った。
先輩に俺の知る事を教える変わりに知らない事を教えてもらった。
今考えると、それが情報家白鯨の誕生の瞬間だったのかもしれない。
兄貴に会った時、兄貴に俺が得た情報を色々伝えた。
兄貴が知らない事もあったみたいで驚いていたっけ。
気が付いたら俺達は情報家白鯨として、裏の世界の人に知れ渡っていた。
俺達を殺しに来た奴を返り討ちにしていくうちにいつの間にか絶対不可侵の掟が生まれていたのはいつ考えても不思議だ。





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