IFの世界のIFの話

□財前誕生日記念
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それから事あるごとに謙也と名乗った死神は俺に会いに来た。


「今日は善哉持って来たで」
「?」
「まあ、食ってみ?」
「…………!」
「気に入ったみたいやな。また持って来るな」


勝手に追い掛けてきて勝手に喋って勝手に帰って行く。
………時々食い物くれるけど。
食べるもの食べて死神を適当に撒こうと走り出すも、簡単に追いついてくる。
俺より速い大人はいなかったのに、死神は俺より速かった。


「そういや、光って足速いんやな」
「ガァァァ!」


鬱陶しくって全力で走るも死神はずっとくっついてくる。


「せや! 光、行くとこ無いんやろ? やったらうち来いひん?」


は? 死神の言ってる意味が解らず、思わず足を止める。


「止まったっちゅう事はええんやな! 俺、光みたいな子が欲しかってん」


訳も解らず腕を掴まれ、いつもの倍以上のスピードで知らん場所まで連れて行かれた。


「!?!?!?」
「謙也君帰ったでー」


いつものニコニコよりもっとニコニコした顔で屋敷に入って行く。
俺の腕を掴んだまま。


「お帰り………って誰連れて来とるん」
「光や。今日から俺の息子やで!」
「ああ。その子が『野犬』やけど、めっちゃエエ子っちゅう光君か」


俺は現状を理解出来ずに眼を白黒させる。


「俺は忍足侑士や。この阿保の従兄弟やから光から見ると叔父さんになるんか。よろしゅう」


そう言って差し出された右手をどうしていいか解らず、逃げる事を前提にただ見てる。
そうしたら侑士と名乗った方が気が付いたらしく、俺の右手を掴んでもう一度「よろしゅう」と繰り返した。
なんか、暖かいのが痒い。

「…………グル」


どうしていいのか解らずに、とりあえず喉を鳴らした。


「まずは風呂と散髪やな。あと飯!」
「はいはい。飯と風呂は用意出来とるで。ハサミはあったかな………」


死神に腕を引っ張られて、風呂場という池みたいな場所に連れて行かれた。






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