頂き物

□君不足注意報
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「…くそっ」


頬をつたって流れる汗を
手の甲でぬぐう

シュートが決まらない

仲間から肩をたたかれ
次はきめていこうと
声をかけられる

ダメだ、集中しないと

マネージャーや
控えの選手が座るベンチを
チラリと見る
だけどアイツはいない


「(くそ…、)」
「豪炎寺ィイ行ったぞ!!」
「っ!、」


鬼道の声に反応するも
トラップミスで
ボールを出してしまった

それと同時に前半終了の
ホイッスルが響く


「っ……くそ、…」


---------……


「豪炎寺、なんだ今日のプレーは」
「鬼道か…」


廊下の壁にもたれながら
腕をくんでいる鬼道
こういうのは円堂が
てっきりくるものかと
思っていた
俺じゃ不満か、と
眉間にシワを寄せ
ふっと笑って見せる鬼道
まずい、これは怒らしたか
いや、その前からか


「今日のプレーだけじゃない、遠征に来てからだな。お前の調子が悪いのは」
「…悪い」
「五十嵐か?」


ぐっと手に力が入る
間髪言われたその名前が
頭に響く


「気になるのか?アイツが」
「そんなことはない」


無機質に響く自分の声
こんな誰にでも
分かるような
嘘をつくだなんて

そうか…と呟いてから
短くため息をつく鬼道


「俺は気にくわないな、なぜ嘘をつく必要がある」
「…お前には、関係ない」
「いや、あるな。現にこうやってチームの士気を乱してもらっては困る…そのくらい分かっているだろう豪炎寺」


あぁ分かってるさ
痛いほどな
だが…

里佳が心配でたまらない
ケガをして向こうで
一人でいるアイツが

くっと唇を噛むと
少し苦い鉄の味がした


「3分だ」
「…は」
「3分だけ待ってやる、終わったらすぐにロッカールームへこい。分かったな」

ゴーグルから
透けて見えた赤い目が
ふと笑って
携帯を開いたまま差し出す


「五十嵐に繋がってる」
「!!」
「早くでてやれ」


鬼道は訳の分からない顔を
しているだろう俺に
携帯を押し付け歩いていく

画面をみると
確かに里佳の番号で
繋がっている状態だった

おそるおそる耳に近づけ
もしもしと呟く


『修ちゃん…?』
「里佳…!」


久しぶりに聞く里佳の声に
ドキリと心臓が跳ねる


「里佳大丈夫『何してるの修ちゃん!』
「…え?」
『聞こえてたよ…さっき会話、修ちゃん試合に集中してないんでしょ』


ピリピリ突き刺さる
里佳の声に言葉がつまる


『修ちゃん心配してくれてたの、鬼道くんから聞いたよ。すごく嬉しかった…

でもね、私のせいで負けてほしくない!
修ちゃんがんばって!
私待ってるから
だから…

早く帰ってきてね』


じゃあ、と急ぎ足で
プッと切れる電話

里佳らしい
泣きそうなのをこらえて
悟られるまいと
切ったに違いない


「…あぁ、この試合、早く終わらせてやる」


帰ったら一番に
アイツに会いにいって
抱き締めにいこう
勝利を手土産にして


君不足注意報

「修ちゃん…寂しかったよ!」
「俺もだ…好きだ里佳」
「////!!」


──────────

金田様ありがとう!
めっちゃ素敵です//
 

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