短編小説

□雨のあとには
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里「はぁ…雨降ってるよ…」

運悪いなぁ…
天気予報晴れだったし
朝もぜんぜん
雨降ってなかったから
傘を持ってきていない
今日は濡れて帰ろ…

ふぅとため息をついて
覚悟を決め
走り出そうとしたら
いきなり後ろから
誰かに手を引かれて
よろけてしまった


里「きゃあ!」
修「危ないっ!」


あれ、こけてない…
受け止めてくれた?
誰だろ…
後ろを見ると
修ちゃんだった


修「大丈夫か?」
里「大丈夫だけど…急に引っ張らないでよー!」
修「す、すまない。今にも走り出しそうだったから」
里「今日傘ないからもう濡れて帰ろうと思って」
修「ばか…そういうときは声かけてくれ。傘持ってるから一緒に帰ろう」
里「うんー」


修ちゃんの傘に入り
一緒に帰っていると
雨が強くなってきた


里「雨強くなってきたね」
修「そうだな、少し急ぐか」


早歩きになったとき
雨が突然土砂降りに!
もはや嵐…


修「この雨じゃ傘は無理だな…俺の家まで走れるか?」
里「う、うん!」
修「よし、行くぞ!」


傘をたたんだ修ちゃんは
私の手をつかみ
走り始める
全力疾走すること
3分ほどで
修ちゃんの家に到着


里「はぁ…つかれたぁ…」
修「さすがに雨の中走るとしんどいな」
里「っくしゅんっ!うー…寒いー…」
修「先に風呂入って来い。風邪引くぞ」
里「うんー…修ちゃんは?」
修「俺は大丈夫だ。里佳のあとでいい」
里「ありがとー。じゃあお風呂借りるね」
修「ああ。そこのドアな。着替えはあとで持っていくから上がったらそれに着替えてくれたらいい」
里「はーい。じゃあ入ってくる」
修「ああ」


雨でべしゃべしゃ…
早くお風呂入ろう
小走り気味で
お風呂場に行った
そこは温泉のような
すさまじい広さだった


里「うわぁ…すごい広い…さすがだなぁ」


さすがは医者の家…
お金持ちは違うなぁ
ふと距離を感じた
私の家は普通の家で
お金持ちでもないし…
そんなことを考えると
落ち込んでしまった


里「はぁー…まぁでも考えても仕方ないよね。」


修ちゃんも待ってるし
早く上がろう
早くあがって
お風呂空けなくちゃ
ささっと着替えて
修ちゃんの部屋へ行く


里「ごめんね修ちゃん、お風呂ありがと」
修「いや、大丈夫だ。じゃあ俺も入ってくるからくつろいでてくれ」


パタンとドアを閉めて
修ちゃんは部屋を出た
広々としたその部屋は
綺麗に整理されていた
ふと机の上にある
写真が目に入った
手にとって見てみると
それは昔遊んだ時の
修ちゃんと夕香ちゃん
そして私の三人が
仲良さそうに映っていた


里「わぁー、なつかしいなぁ。夕香ちゃん、元気にしてるかな。ん…?あれ、この下もう一枚写真あるんだ」


気になったから
申し訳ないと思いつつも
もう一枚の写真を見る
するとそこには
私と修ちゃんがいた


里「ふ、二人だけの写真!?は、恥ずかしいよこれ…」


思わず赤面してしまう
まさか自分の写真が
あるとは思わなかった…
写真片手に座り込んで
赤面していると
いつ帰っていたのか
修ちゃんが
後ろにいたらしく


修「り、里佳!?何で見てるんだっ//」
里「だ、だって机の上にあったんだもんっ!」


二人して顔を見合わせ
赤面してしまった
写真を見られて
修ちゃんもどうやら
とんでもなく
恥ずかしかったらしい


修「まさか見られるとは思ってなかった…」
里「な、なんでこれ机の上にあるの…」
修「…里佳をいつでも見ていたいからだ。帰りに別れたあとメールはしても姿が見れないと…その…さみしいんだ…」


言った後に照れたのか
顔を下に向け
手で覆っていた
言われたこっちも
すごく照れるわけで…
でもうれしくて
つい体が動いていた
気づいたときには
修ちゃんの頬に
自分の唇をあてていた


修「り、里佳!?」
里「え、あ…っ!ご、ごめんっ!つい体が…っ」


私もびっくりした…
こんなことするなんて…
もう何がなんだか
わからなくなっていたら
私の頬に
何かあたたかくて
やわらかいものが触れた


里「…へ?」
修「お返し…だ。その…うれしかった。でもどうせするなら…こっちにしてくれないか」


そう言い自分の唇に
手をかざす修ちゃん
物事を理解すると
恥ずかしくって
うつむいてしまった
すると後ろから
修ちゃんに抱きしめられる
心地よいあたたかさに
すごく安心する
なんかふわーっとして…
あれ…ねむ、い…


里「しゅ、ちゃぁ…」
修「…里佳?」
里「ん…」
修「寝たのか…ふっ、しょうがないやつだ。おやすみ、里佳」


眠りに落ちる間際に
唇にやわらかい感触が
あった気がした


-end-
 

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