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□いつも見てる
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小さく吹いた風が少女の頬をかする。
小さくても冷たい風に神楽は身震いした。本格的な冬が始まった。
「おばちゃん、いつもの酢昆布おくれヨー。」
「はい。今日も寒いわねぇ。」
震えながら鼻水をズルズルいわせる神楽におばちゃんが言った。
いつもの公園へと酢昆布を食べながら足を進める。
すると、前の方に見慣れた着物を着た銀髪の男が歩いていた。神楽はその男の正体がすぐに分かって目を輝かせる。
(銀ちゃん!!!)
神楽は銀時の方に走り出した。
「銀ちゃ……っぅわ!!」
急に右腕を引っ張られてあっという間に裏路地に連れ込まれた。
「何者アルかぁ!!!」
また攘夷のヤツらかと思い傘を構える………
が。
「やあ、久しぶり。」
その声の主をみて神楽の背中は凍りついた。
朱色の長い髪を三つ編みにしてアホ毛をゆらす男。
「か……むぃっ…!」
ソレはいつものように笑っているが、神楽には黒いものしか感じ取れなかった。
「……何の用ネ。」
冷や汗をかきながらも鋭い目で睨む。
しかし、神威はそんな妹にもろともせずニコニコ笑っている。「ひどいなぁ。折角兄ちゃんが会いに来たのに、その反応はないだろう?」
「黙るヨロシ。死ねヨ。」
「兄ちゃんに向かって何てこと言うんだ、神楽。」
神威は少し眉を寄せると神楽の頬をつねった。
「イダダダ!!やめろヨ!」
神楽はその手を振り払おうと手をあげたが、その手はまんまと神威に掴まれる。
同時にもう片方の腕も掴まれ、そのまま壁に押しつけられた。
「っ!!?」
強い衝撃が神楽の背中を襲う。大事な傘と酢昆布を落としてしまった。