main

□いつも見てる
1ページ/3ページ

小さく吹いた風が少女の頬をかする。
小さくても冷たい風に神楽は身震いした。本格的な冬が始まった。

「おばちゃん、いつもの酢昆布おくれヨー。」

「はい。今日も寒いわねぇ。」
震えながら鼻水をズルズルいわせる神楽におばちゃんが言った。



いつもの公園へと酢昆布を食べながら足を進める。

すると、前の方に見慣れた着物を着た銀髪の男が歩いていた。神楽はその男の正体がすぐに分かって目を輝かせる。

(銀ちゃん!!!)


神楽は銀時の方に走り出した。

「銀ちゃ……っぅわ!!」

急に右腕を引っ張られてあっという間に裏路地に連れ込まれた。


「何者アルかぁ!!!」

また攘夷のヤツらかと思い傘を構える………
が。


「やあ、久しぶり。」

その声の主をみて神楽の背中は凍りついた。
朱色の長い髪を三つ編みにしてアホ毛をゆらす男。



「か……むぃっ…!」



ソレはいつものように笑っているが、神楽には黒いものしか感じ取れなかった。


「……何の用ネ。」

冷や汗をかきながらも鋭い目で睨む。

しかし、神威はそんな妹にもろともせずニコニコ笑っている。「ひどいなぁ。折角兄ちゃんが会いに来たのに、その反応はないだろう?」

「黙るヨロシ。死ねヨ。」


「兄ちゃんに向かって何てこと言うんだ、神楽。」

神威は少し眉を寄せると神楽の頬をつねった。

「イダダダ!!やめろヨ!」

神楽はその手を振り払おうと手をあげたが、その手はまんまと神威に掴まれる。


同時にもう片方の腕も掴まれ、そのまま壁に押しつけられた。
「っ!!?」

強い衝撃が神楽の背中を襲う。大事な傘と酢昆布を落としてしまった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ