Parody
□シンデレラ
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ここは平和な田舎町。その町のとある家に、女ばかり暮らしている家がありました。
「こらぁ、雪!私の部屋の掃除はまだなのぉっ!?」
「本知りませんか?机の上に置いといたのに、何処にも無いんです!」
「はいっ、ただいま……!!」
意地悪な継母と義理の姉達に囲まれて肩身の狭い思いをしているのが、雪という少女。
綺麗で長い黒髪に、澄んだ瞳。とても美しい容姿をしているのですが、貰われっ子だからと格下扱いを受けている彼女は、いつも薄汚れた服を着て忙しく働いていました。
あだ名は「シンデレラ」。灰かぶりという意味です。
「早くしてちょうだいよね!今夜はお城のパーティーなのよ!ドレスの準備もまだなのに」
上の姉である柳宿が、床の拭き掃除をしている雪を見てため息をつきます。
──今夜は、この国にいる三人の王子のお妃選びを兼ねたダンスパーティーなのです。
「もうあたしは断然、次期国王の星宿様一筋!高貴で、美しくて……素敵なのよねぇ……はぁ」
うっとりと妄想に浸る柳宿とは対照的に、下の姉である張宿はあまり興味なさげに、雪が見つけてきた本を読んでいました。
「アンタは誰狙いなのよ?」
「え?あ……いや、特にないんですけど……」
「つまんない子ねえ!」
雪は、彼女達の会話に入ることが出来ません。
何故なら今夜は留守番を言いつけられているからです。招待状だってドレスだって、もちろん雪の分はありません。
「ちょっと、掃除はもうあたし達が行った後でいいわ!そろそろ支度を整えなければ……ドレスの準備をして頂戴!」
「は……、はいっ!」
バタバタとクローゼットまで走り、雪は二着のドレスを掴んで姉達の元へと戻りました。
「これこれ。私の勝負ドレスよっ!どお?雪」
「柳宿姉様、とってもお似合いですわっ」
まばゆいピンク色のフリフリドレスですが、美人は美人なので確かによく似合っていました。
「張宿姉様も……はい、これ」
張宿も淡いイエローのドレスを受け取り、少し恥ずかしそうに着替えを始めます。
そんな二人を羨ましげに見つめて、雪は誰にも気付かれない小さなため息をつきました。