Parody

□桃太郎
2ページ/7ページ

「ああああ……あなた!」

「だっ、そんなに驚く事は……」

「どうしましょう!こんなのが入ってたせいで、中の実がほとんどスッカスカですわ……!当座の食糧にするつもりだったのに……!」

「やむを得ん。棄ててきなさい」

「人の話を少しは聞くのだ!」

男が立ち上がり、二人に怒鳴ります。

「なによあんた。変質者?」

「失礼なのだ!オイラは神の遣いなのだぁ。鬼ヶ島の鬼を退治すべく、人間の世界へ……」

「ますます胡散臭いな」

「最後まで聞いてほしいのだ……」

「早く話しなさいよ」

「……つきましては、鬼退治に行くための装備を、ですね……」

「我が家にそんなものを用意する余裕はないぞ」

星宿じいさんが、ばっさりと切り捨てます。

「……鬼ヶ島には金銀財宝が眠っているということなのだ、鬼を倒した暁には、それを」

「おい柳宿、今すぐ吉備団子を用意するのだ。──そう。こないだ岡山から取り寄せたやつ」

「あまり、滅茶苦茶にしないで欲しいのだ……」

「そうとなれば、そなたに名前をつけてやろう。そうだな、桃から生まれたから桃た……」

「オイラ井宿というのだ!」

覆い被せるようにそう言うと、星宿じいさんは少し残念そうに眉を寄せますが、構ってはいられません。

「はいはいはい!吉備団子!」

台所から飛び出した柳宿ばあさんが、「岡山銘菓」と隅々まで書かれた包装紙で綺麗に梱包された吉備団子を3箱、持ってきました。

それを井宿に手渡し、無理矢理背中を押します。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ