Parody
□桃太郎
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「ああああ……あなた!」
「だっ、そんなに驚く事は……」
「どうしましょう!こんなのが入ってたせいで、中の実がほとんどスッカスカですわ……!当座の食糧にするつもりだったのに……!」
「やむを得ん。棄ててきなさい」
「人の話を少しは聞くのだ!」
男が立ち上がり、二人に怒鳴ります。
「なによあんた。変質者?」
「失礼なのだ!オイラは神の遣いなのだぁ。鬼ヶ島の鬼を退治すべく、人間の世界へ……」
「ますます胡散臭いな」
「最後まで聞いてほしいのだ……」
「早く話しなさいよ」
「……つきましては、鬼退治に行くための装備を、ですね……」
「我が家にそんなものを用意する余裕はないぞ」
星宿じいさんが、ばっさりと切り捨てます。
「……鬼ヶ島には金銀財宝が眠っているということなのだ、鬼を倒した暁には、それを」
「おい柳宿、今すぐ吉備団子を用意するのだ。──そう。こないだ岡山から取り寄せたやつ」
「あまり、滅茶苦茶にしないで欲しいのだ……」
「そうとなれば、そなたに名前をつけてやろう。そうだな、桃から生まれたから桃た……」
「オイラ井宿というのだ!」
覆い被せるようにそう言うと、星宿じいさんは少し残念そうに眉を寄せますが、構ってはいられません。
「はいはいはい!吉備団子!」
台所から飛び出した柳宿ばあさんが、「岡山銘菓」と隅々まで書かれた包装紙で綺麗に梱包された吉備団子を3箱、持ってきました。
それを井宿に手渡し、無理矢理背中を押します。