Parody

□JIN遊戯 ー完結編ー(笑)
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坂本龍馬とは、豪快で好奇心旺盛な男であったという。雪の"日本史"なるものの記憶と、今現在逃げ回っている坂本龍馬の人間性は一致している。いやむしろ、かなり大人しく、美化して後世に伝えられているのだと井宿は思った。

「井宿!宮殿の外に出られたら終いやで!」

「大丈夫、外には出られないように結界を張っておいたのだ」

「お前、敵相手やなくてもそんなこと出来んのかいな」

「君を閉じ込めるつもりでやったら、容易い事なのだ」

「どういう意味か知らんけど、おのれ……ヘブシッ!!」

ひょいと柵を飛び越えて中庭に出た井宿を追おうとした翼宿が、見えない壁に阻まれる。効果は抜群だ。君たちは似た者同士だから、と呟いてやったが、きっと聞こえていないだろう。

「さあ翼宿。遊んでいる場合ではないのだ。一刻も早く見つけ出して、江戸にお帰り願わねば」

「後で……しばく」

ぶつけて真っ赤に染まった鼻っ面を押さえて、翼宿も井宿に続く。あんな異邦人がうろついていればすぐ騒ぎになりそうなものなのだが、まだ誰にも見つかっていないのだろうか。

今ごろ江戸も騒ぎになっているかもしれない。南方医師の心を煩わせないように、早々に龍馬を送還しなくては。

「坂本はんは女好きや言うとったな。後宮の連中とかち合わんならええけど……」

「収拾がつかなくなりそうだから、絶っ対に嫌なのだ」

回廊を小走りに駆け抜けながら、二人はしばし最悪の事態について意見を飛ばしあっていた。


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