short

□だいすきだ。
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※豪炎寺視点


「だって好きなんだもん」



と、爽やかに言い放ったソイツは、余裕の笑みを浮かべて
いた。
まるで、風丸は俺だけのものだと云わんばかりに口元を張
らせていた。

一瞬、この余裕にコイツが本当に一年なのかと…いや、そ
れ以前に風丸はコイツのこの憎たらしい一面を知っている
のだろうか。
これを見せてやったら風丸は俺に寝返るだろうか、とか少
しはこっちを見てくれるだろうか、なんて思ってしまう。





風丸は、年下の奴が可愛いと思っている、らしい。もちろ
ん、虎丸から小暮から壁山と、性格や外面は気にせずに出
来ない所や苦手な面等は全力でカバーするし、練習だって
遅くまで付き合っているのを見た事が何度もある。
と云う面で、一年には全員から好かれているし、とても素
晴らしい敬意を持たれているのは日頃の練習、生活面から
見て取れる。
実際、風丸の隠れた熱血ぶりには俺も驚かされた事だし、
「あの」円堂が幼馴染なのだから暗黙の了解なのである。

一方、緑川はと云うと、外面(特に風丸やヒロトが居る時)
はとても良い子と褒め称えるべきな性格をしている。
しかし、何故か一方的に嫌われる奴らが多いのだ。例えば
俺と不動と円堂など、なにかと風丸に関わる奴。
しかし何故か吹雪は仲がとても宜しいようで良く部屋に行
ったり来たりしたり休憩中に髪を弄ったりして遊んでいる
くらいだ。



まあここで説明を一段落付け、緑川の方を見るとまた屈託
の無い笑顔(黒)で此方をドヤ顔で見続けている。
うざいと云うのが正しいのか何なのか。

数秒睨んでやると丁度合宿所の方(と言っても結構近い所だ)
から風丸の緑川を呼ぶ声が聞こえ、「あっ、」と緑川が何
かを思い出した様な表情をする。
風丸の方へ向かおうとするがあっちの方が先に此処に着い
てしまい、俺を無視して緑川が風丸に抱きつきに走る。
さっきの態度と一変して今度は流石一年、と言うべきか否
かは分からないが、甘えん坊(ヒロト曰くこれだけ懐いてる
のはお日様園以外で風丸が始めてらしい)と言うのが一番正
しいだろう。


「豪炎寺、」

ぼぅ、と二人の方を見ていると急に名前を呼ばれ慌ててピ
ントを戻すと声の主が少し遠慮がちな表情で「何か大事な
話でもしてたか?」と聞かれる。
「いや、」と否定すると「そっか」と笑みで返される。
その表情に癒されていると二人で何処かに行くのだろうか
、緑川が早く行こう等と急かして風丸を困らせている。
それでも動かないのが気に入らないのかついに腕を引っ張
り出す事をし始め、更に風丸を困らせる結果に至っている。

ふ、と風丸が息を吐くと俺に「じゃあ、後で」と手を上げ
て挨拶をすると緑川が目を輝かせる。

「早く行こっ!!!」

風丸がくる、と俺に背を向けると緑川がちら、と俺の方を
一見してまたあのドヤ顔をする。




ああ、うざい。

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