BLEACH Room

□高潔な理性
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現世に、少し厄介な虚が出現したと知らせがあったのは、一刻ほど前のこと。
死神代行の黒崎一護がその討伐に出向いたらしいのだが、負傷して取り逃がしたらしい。
そして来た、救援要請。

黒崎が指名したのは、事もあろうか恋次だった。
確かにあの男と恋次は仲が良い。
尚且つ恋次は強いのだから、あの男が恋次を指名したくなる気持ちはわかる。

わかるが、許せぬ―――。

何故黒崎の要請を素直に聞き入れて、恋次を虚退治などに向かわせねばならぬのか。
恋次を向かわせるよう指示を出されたとき、思わず憮然とした表情になってしまったのは致し方ないことだろう。
心配な気持ちが、苛立ちを誘う。

そして、納得がいかないまま、現世行きのことを恋次に告げた。
僅かに楽しげな笑みを浮かべた恋次が思い出されて、余計に腹が立つ。
私と共に仕事をするより、黒崎と虚退治をするほうが楽しいのか、と。

―――実際は、確かに楽しいのだろう、戦闘を好む恋次には。

それがわかっているからこそ尚更、恋次を指名した黒崎が憎らしい。
まるで恋次を取られたような気さえする。
恋次が尺魂界を発って、そう時間が経ったわけでもないのに、もう既に苛立ちは大きくなっていた。

怪我などせずに戻って欲しい。

そろそろ、終業の鐘が鳴る頃だ。
恋次はきっと、終業を過ぎなければ帰ってはこないだろう。

「戻ってからの報告は自分でやりますから、終業時間になったら隊長は帰っていいっすからね。」

久々の戦闘に心踊っているのか、ウキウキとした様子で恋次がそう口にしたことを思い出し、溜息を一つついた。
同時に、鐘の音が聞こえる。
ここに居てもどうせ恋次に会えないのなら、居る意味などない。
早々に帰宅することに決めて、用意を始める。
恋次―――、無茶はするな。
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