テニプリRoom

□贈り物
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忍足と跡部は、共に10月生まれだ。
日にちも割合、近い。
そのため二人は、お互いの誕生日の間をとって、10月10日に一緒に祝うことにしている。
今年も例外ではなく、その日を共に過ごした。
プレゼントを交換し合い、お互いがお互いに、生まれてきてくれたことに感謝しながら。
先に誕生日を迎えていた跡部は、既に他からも、たくさんの贈り物を貰っていた。
部のレギュラーたちからだったり、ファンクラブの子達からだったり。
部の連中からは、直接手渡しで受け取ったが、ファンの子達からは直接受け取ることはない。
毎年のことだが、跡部はファンの子達にあまり関心がないため、贈り物は全て、樺地経由で渡される。
中には直接手渡そうという、気丈な者もいたりするのだが、跡部は相手にしなかった。
贈り物を貰える事は、素直に嬉しいと思う。
だが、それをいちいち受け取っていたら、大変な時間と労力を要する。
だからファンクラブなるものが発足していて、こういうときに役に立つのだ。
例外は作らない方が、今後のためにもいいのだと、跡部は考えていた。
そんな跡部とは違うのが、忍足だ。
忍足は毎年、かなりの数の贈り物を手渡しで貰う。
いちいちいちいち、胡散臭い笑顔付きで、だ。
元が女好きなのだから、仕方ないのかもしれないが、跡部にとって、これ程面白くないことはない。
今年も間もなく、忍足の誕生日がやってくる。
またあの嫌な思いをするのか、と跡部は考えて、ふと気づいた。
今年の忍足の誕生日は、休日だ。
もしかしたら、いつもよりは贈り物が少ないかもしれない。
そう考えて、跡部は少しだけ、気持ちが軽くなったように感じた。

忍足の誕生日前の金曜日。
忍足の周りは、騒がしかった。
彼の誕生日が日曜日なために、その前にプレゼントを渡そうと、忍足を想う子たちが押し掛けてきていたためだった。
跡部の淡い期待は、脆くも崩れ去ったのだ。
朝から不機嫌極まりない跡部。
もう既に、忍足はかなりの量のプレゼントを受け取っている。
そして昼休み。
クラスの違う跡部と忍足は、昼食を共にすることは少ない。
今日もそれは変わることなく、跡部は教室でクラスメイトと食事を取ることになっていた。
さて、食べようとしたとき、気づいた。
飲み物がない。
いつもなら、気の利く後輩が買ってきてくれるのだが、生憎今日は、学校自体を休んでいる。
跡部は仕方なく、自分で調達に行くことにした。
購買までは、中庭を抜ける通路を通るのが一番早い。
足早に通り過ぎようとして、気づいてしまった。
中庭に見える、二つの影。
腰まである栗色の巻き髪の女性と、背の高い美しい黒髪の青年。
黒髪の青年は、忍足に間違いなかった。
跡部が彼を見間違うはずがないから。
跡部は、見たくないと思いながらも、目が逸らせずにいた。
声が届くほどの距離ではないため、何を話しているのかはわからない。
相手の女も、誰なのかよくわからない。
でも、制服を着ていないところを見ると、教師の可能性が高い。
あの背丈の、女性教員を思いつく限り上げてみて、一人思い当たった。
それは、学校内で人気の高い、結構な美人教師だった。
跡部のクラスでも、彼女はすこぶる人気で、本気で狙っている者も少なくなかった。
そこまで考えてから、跡部は嫌な予感がした。
彼女がもし、忍足に告白していたりしたら・・・。
跡部の中で、勝手にその想像は膨らんでいった。
不意に、忍足の笑い声が聞こえた気がした。
それは、ひどく楽しげで、優しい笑い声だった。
跡部は、そこに居続けることが出来なくて、走り出した。
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