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□花菖蒲
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私は上からガルル小隊を扱う事になった。

小隊を支持する権利を手に入れたからには活用するに他あるまい。

と出世したい人なら誰でも思うであろう事を私も考え、とりあえず反乱の起きている星にいる別の小隊へ加勢するべくガルル小隊を送った。


ガルル小隊の実力を聞き及んでいた私は、直ぐにかたをつけてくれると思っていた。


だが反乱軍は思っていたよりしぶとかったようで、ガルル小隊も数名負傷し軍へ帰ってきた。

驚いた事にガルルもその負傷者の一名である。

聞く所、看護兵のプルルを庇っての負傷であるらしい。


正当で、勇敢で、惚れ直す想いだが、他の女を庇ってとなれば、こちらにもすこしくらいのどす黒い感情が湧く。

部下に惚れておきながら、嫉妬するなんて、どうした恥知らずだろう。

だけどこうやって初めての嫉妬持て余すのはなかなか愉しかった。


軍の療養施設を予定より早く出たガルルは私の執務室へ来て、傷の治り具合と、戦場での出来事を要領よく説明した。

私はそれを興味無さ気に見遣りつつ、足元にあるそれを足で弄っていた。

机の前に居るガルルに椅子に座る私の足元にあるそれは、多分、見えない。

もうガルルは元気なようだし、これも早速必要なくなったな。折角取り寄せたというのに。

溜息を吐くと、ガルルは勘違いをしたのか顔の影を濃くして黙った。

単に恐い顔じゃないか。落ち込んでいるように見えないのは、表情が乏しい為だろう。

取って付けたような台詞を思いつき、私はガルルに言った。



「怪我をするのは軍人として恥ずべき事がと心得てもらいたいな。最も格好悪いのは死ぬことだけどね。君が生きていてくれて本当によかったよ」

「…心配掛けました」

「まったくだよう」



くすくすと笑えば、ガルルの方も、ふ、と顔を緩ませる。

特別な意味に悟られては駄目だったな。思い出して内心慌てて付け加えた。



「他の隊員の怪我の具合はどうだった?」

「…………」

「うん?重傷は居なかった…よな?」

「……ええ」

「そう。なら良かった。よろしく伝えといてくれよ」

「…はい」



何故だかガルルの顔がまた曇った。何か困った事を言ったかな。

でもさり気無く訊くにしてもそれらしい話はもうしてしまったし。

まぁ、また今度訊けばいいか。そう思って私はガルルに退室を命じた。






 
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