短編
□忍者と雨
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雨がふる予想は当たり、私は近くの店の屋根に半身を隠しながら折り畳み傘を開いた。
小雪の家に帰る道は、だんだんと雨で濡れ、次第に足に雫がはねるようになった。
買い物袋の中身が濡れてしまう、と急ぎ足で私は小雪の家へ急いだ。
腹が空きすぎて道に行き倒れていたのは昔。
なんていうか、毎日空腹に限界が来たら商店街から何かしらパクって食ってたので不規則な生活だった。
家出して、トリッキー気取ってふらふらしてるものの、限界なんて何度も味わえば死ぬ直前がわからない。
だから行き倒れたとき、とうとう死ぬのかと思った。
若い綺麗なうちに死ねるなら、なんて格好付けた理由もあるけど、なんつか、わざわざ生きなくてもいいかなーって思っちゃった。
てー、ことで、行き倒れていたんだよ。
そんなときだな。
天使が見えたのは。
猫のような笑顔の小雪に会い、その下でその下の私を覗くドロロが居た。
なんかこっちの痛むような空腹も知らずに、べらべらと喋っていた。
助けて貰えんのかなーって思って見てたら、気付いたら本当に助けてくれていた。
近くは小雪とドロロの家だったみたいで、囲炉裏の火のせいか少し温かい床板が気持ちよかった。
このまま眠っちまおうかなんて思っていると、ドロロが重湯を飲ませてくれた。
変な青い格好した生き物に食わせられるのは面白くなかったけど、腹へってたから何回もおかわりした。
それだけ重湯は味気ないくせに、美味しかった。
その日から私はその家に居候するついでに、就職活動と家事を幾らか手伝うことにした。
天使たち二人に、ただで厄介になるような悪魔にはなれなかったんだよ。
アルバイトだけど幾つか見つけたし、それでメシを買えるようになった。
小雪とドロロの喜ぶ顔が、毎日の楽しみだ。