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□スミレ
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「お帰り」
「…ただいま」
私の家にこのガルルとかいう宇宙人が住むようになってから、もうすぐ一ヶ月になる。
ガルルは女の私より面倒見がよくて、仕事で疲れて帰ってきた私によく奉仕する。
帰ってくればご飯が出来ていて、風呂も沸いている。
侵略者とか言ってたけど仕事のほう、大丈夫なのだろうか。
「俺は捕虜としてここにいるからな」
「やめてよ。私が悪いひとみたいじゃないか」
「変わらないだろう。俺を置き去りにしていつも仕事へ行くのだからな」
「無理を言うな」
「わかっている」
くすくすと笑って、ガルルは立ち上がり晩御飯を温め始めた。
私は手の中のそれに丁度良いコップを一つ取り、水道から水を少し汲んだ。
リビングのテーブルの真ん中へ置き、手で摘んでいた菫を挿した。
紫がとてもよく咲いている。
花は結構好きだ。何も言わないし、土に還るから処理にも困らない。
眺めているとガルルが晩御飯を盆に乗せてやってきた。
「なんだ?それは」
「菫。帰ってくるときに後輩と花の話していて、近くで丁度よく菫が咲いていたから摘んできた」
「…ふうん。ほら、食え」
「おう、有難う。…花は嫌い?」
「別に嫌いではない。お前が好きになれといえば、好きになろう」
「…なにそれ」
「要するに俺はお前に惚れているという事だ」
「ぶっほぉおっっ」
啜った茶を噴出してしまった。
むせ返る私を面白そうに眺めながら、ガルルは無言でぬれたテーブルを吹き始めた。
なんだかな…。なんでこう、さらりと言っちゃうんだろうな。
ガルルと会話するのが憚られて私はテレビをつけた。