〜万屋の副業2〜

□Un prologo
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オギャーッ!オギャーッッ!!


甲高い声で無防備に泣きじゃくる。
己の拳をグッと強く握りしめ、歯の並んでいない口を大きく開いて喉奥から力いっぱいの声が発せられた。新たな生命が誕生した瞬間といえよう。


「先生ッ、男の子ですっ」

白い衣服を纏っている若い女性は大粒に垂れる汗をかいで、赤子を抱えながら小声に叫ぶ。
彼女の手には、この世に命を授かれたばかりの赤ん坊の姿がはっきりと見える。純白の清潔なタオルに優しく包まれていた。

「そうか、――――――ッ!!?」

彼女の小さな腕に視線をやった一人の男。
同じく白衣を身につけている。加えて汗もグダグダ。
一時的に安心しきった眼差しをしていたが、あるものを目の当たりにし、眉間に強く皺を寄せて表情が一変する。

「ですが、胸辺りにおかしなものが、」
「そんなまさか・・・」

細長い目を大きく見開いて、一滴の汗が頬に垂れ下がる。彼の表情と沈黙によって緊張感と不安を漂わす空気となった。

「ハぁッ、先生、赤ッ、ちゃんは」

それ以上に息上がりを見せ、ありえないほどに汗拒む女性が力を振り絞って口を器用に動かす。白い布に肩から覆いかぶさられ、仰向け状態で硬いイベットの上に寝そべっている。おそらく彼女が赤ん坊の命を授かった塔の本人。

「先生、・・・この胸にあるものは――――」
「それはあとだ、詳しく説明する」
「は、はいッ」



















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