Long novel
□第1章 刀無き文明時代
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目の前に見えるは人、人、人――…。
西洋和服の服の様々な色が鮮やかに踊り、目の前の人々の笑顔が、会話がレンガ造りの街を賑やかな雰囲気へ醸し出していた。
街には春らしい暖かく柔らかな陽射しと、少し冬の寒さが残っている空気が混じり、もうすぐ桜の開花の時期を知らせてくれていた。
しかしここには桜の木どころか緑が見当たらない。
西洋文化が凄まじい勢いで日本へと入りこみ、街の至るところで日本らしいものがなくなっている。
それが寂しいと感じている人が未だ多くいるのだ。
――俺もその一人なのだろう。
人波にのってレンガ通りを進むこと15分ほど。
目の前に見慣れた大きな黒い建物が見えてくる。
大江戸――否、大都会東京の大きなレンガ通りの一角に建つ黒い建物。
かつて旧幕府と対立し、圧倒的な軍事力の差で勝利をおさめ、明治という平和な時代の招来に手を貸した者たちが数多にここに身をおく。
東京警視庁――。
ここが俺の――斎藤一の新たな歩む道である――…。