365Words

□103.色のない世界【カーニヴァル】
1ページ/1ページ





ーーこの世界に色は無い。





いや、無くていいじゃないか。






この世界の人間は何にだって己の利を求める。

弱き獣の肉を狙うかの如く、弱い者であればあるほど、その酷さはエスカレートしていく。



ただ、得があるだけーー

それだけの為の縁と考えている奴だって少なくない。


利用される子供、若者、まだ生すら授かっていない者ーー






俺もその一人かもしれない。



だからあの森に『逃げた』のかもしれない。


風が音を鳴らし、自然が世界を作るあの森にーー。


他の人間が容易に汚れた足を踏み入れられる場所じゃあない。

自然が、世界が汚れたものを拒むから。



俺はただ、





静かでありたいんだーー





でも、上の奴らが見過ごすわけがない。

使える道具を、そこらに放っておくわけがない。



もうすぐ俺は魔の手に捕まるだろう。







…ねぇ无?


俺のが聞こえているかい?




君はいつでも僕をあたためてくれたよね?


その恩返しを君にしたい。



…君は今、何処にいるのかな…ーー



【了】
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ