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□103.色のない世界【カーニヴァル】
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ーーこの世界に色は無い。
いや、無くていいじゃないか。
この世界の人間は何にだって己の利を求める。
弱き獣の肉を狙うかの如く、弱い者であればあるほど、その酷さはエスカレートしていく。
ただ、得があるだけーー
それだけの為の縁と考えている奴だって少なくない。
利用される子供、若者、まだ生すら授かっていない者ーー
俺もその一人かもしれない。
だからあの森に『逃げた』のかもしれない。
風が音を鳴らし、自然が世界を作るあの森にーー。
他の人間が容易に汚れた足を踏み入れられる場所じゃあない。
自然が、世界が汚れたものを拒むから。
俺はただ、
静かでありたいんだーー
でも、上の奴らが見過ごすわけがない。
使える道具を、そこらに放っておくわけがない。
もうすぐ俺は魔の手に捕まるだろう。
…ねぇ无?
俺の声が聞こえているかい?
君はいつでも僕をあたためてくれたよね?
その恩返しを君にしたい。
…君は今、何処にいるのかな…ーー
【了】