HUNTER×HUNTER

□光の先
1ページ/1ページ



イルミに呼ばれて部屋に入ると、そこに彼の姿はなく既に時計は午前1時を過ぎていて、イルミの部屋は月明かりだけが部屋を照らしていた。

(イルミの部屋ってなんか寂しい…)




ドアの近くに立っていたままの私は、呼ばれたようにベランダに出た。柵に手をかけて、ジッと月を見ながらイルミの部屋を思う。
部屋はその人の性格がよくわかるらしい。
変態ピエロのヒソカは、ホテルや女のところを渡り歩くから絶対に過去と関わりを持たず…、変人団長の異名を持つクロロの部屋は本が沢山ある。その中には、いかがわしいのも含まれていてクロロという存在を体言していた。




だけど、イルミの部屋は過去は感じるけどそこにある何かがない。
生活感が無いその部屋の意図するそれは生きてる感じがしないと一緒。
そこに“いた”ことは確かなのに今“いる”かはわからないってことと一緒。

(でも、それは私の方が酷いか…)




そう考えて私に部屋は無いのを、思い出す。
ヒソカみたいにホテルとかを転々としているからとかではなく、本当に存在しない。
今は、イルミが側にいてくれてかろうじて存在してる危うい私は、しかしイルミに捨てられたらまた存在のない自分に逆戻り。
まぁ、それならばそれでいい。


部屋のこと考えると、私はまるで幽霊のようだと自嘲した。


「ナナシ」


急に声がして振り返ると、イルミがドアのところから歩いて来ていた。


「どうしたの?」
「私って、幽霊に似てる?」


先程の考えを口に出して聞くとイルミは、いつもの呆れた表情でこちらを見た。表情…と言ったが、本当のことをいうと顔は見えてない感覚でそうだと判断した。


「ナナシが?ありえないね」
「でも、私って人間らしくない…」
「…そんなの俺には関係ない」


暗い部屋にいるイルミの表情は、今だに見えやしないがイルミの雰囲気が変わった気がした。
いや、確実に怒っている…。


「ぉ、怒らないで…」
「怒ってない。で、なんでそんなこと思ったの?」
「………アレ?」


確実に怒っている筈なのに、イルミは怒りを無理矢理押し殺し私にそんな言葉を吐いた理由を問う。
答えはしなかった。忘れたと思わせるのが、精一杯だった。


「呆れた…」


そんな私の精一杯の努力を、イルミはいとも簡単に汲み取ってくれた。その行為に、私は酷く救われイルミは、片方のポケットを探った。


「それよりナナシに渡したいものあるんだよね」


イルミの切り替えは、早い。会話においても暗殺においても、引きずることなく次々進む。
それが、暗殺業を続けられる理由なのかもしれないと密かに私は思っている。


「前、太陽の輪が欲しいって言ってたでしょ?」
「うん」


その話は、先週したばかりだ。私も、無茶なこと言ったと思える程有り得ない願いだった。


「でもさ、いくら俺でもやっぱり太陽は無理なんだよね…」
「うん…?」


だからどうしたと言うのだ。私は既に諦めていて、あんな我が儘いつものように流してくれて構わない。
少しずつ近づいたイルミは、すぐ目の前にいる。


「だから、これで我慢して…」


イルミが私に渡してきたものは小さな箱だった。その箱の大きさで大体の見当はつく。


「指輪?」
「そう石はね…「アレキサンドライト」

イルミに合わせて石の名前を当ててみた。


「正解」


そう言って、額にキスをされた。ご褒美という名の彼の癖である。ご褒美が貰えるのは嬉しいけど少し照れくさかったりする。
見つめあう二人の手の中だ、箱の中に鎮座する指輪は、月の光を反射してキラキラ光る。


「綺麗…」
「その指輪は特別なんだ…」


呟いた私の言葉は、彼の台詞に吸い込まれるように消えた。
イルミは、指輪を私の薬指にはめ込むと指の先をギュッと掴んだ。


「その指輪は、ナナシを縛る大切な鎖だから特別なの。ナナシ…、俺と結婚して」
「…ぁ「返事は当然OKだよね?…っていうかそれしか認めないから」


断るなんて当然するはずなのに、イルミがそっぽ向いて照れ隠しするから、その行動があまりにも可笑しくて可愛いから私も、「お願いします」と頭を下げた。
すると、幾分か安心したように息をもらすと初めて見るような笑顔で「うん!」って言ってくれた。





寂しい人だなんて嘘。
こんなに愛がある人が寂しいなんてあるわけない。こんなにも優しくて表情豊かな人、他にいないもの。


だから、どんなに他人から蔑まれたって…どんなに貴方のお母様が私を嫌悪したって、貴方という存在が私を照らしてくれる限り、私はどんな逆境にだって堪えてみせる。



(早く明日にならないかな…)
(どうして?)
(早く緑のこの石が赤に変わるところがみたいから!)
(…明日、挨拶に行こう)
(挨拶って?)
(母さんと親父に、結婚しますって伝えるため)
(…うん!)

END

-----------------------
後書き

少女は捨てられていたのをイルミに拾われ幸せに暮らしてる設定

↓↓豆知識[イルミ×月食]


















「アレキサンドライトの解説は?」
「あ、アレキサンドライトとは蛍光灯の下だと緑色、太陽の下だと赤色に変化する鉱石のことです」
「少女は、明日になって早く赤色になった石の指輪が見たかったんだよね?」

(っていうかカンペ止めて…。その顔ムカつくから殺しそうなんだけど)
(ひぃいいい!)


「そ、そういうこと!以上、アトガキと解説でした!」


イルミがログアウトしました。
月食がログアウトしました。




ちなみに・・・。

少女はキキョウに無事気に入られ、今では本物息子より少女を可愛がっています。



201205
再Up&改稿



.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ