HUNTER×HUNTER

□婚活のすすめ
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私、ナナシは21歳にして独身。見兼ねた母さんが、見合い話を持ってきたため現在、実家に帰省中。





こんな家に、良く見合い話が来たなと感心していれば相手は、鳴く子も黙るあのゾルディック家の長男イルミだった。


私の家は、暗殺家業で生計を立てる異質者の中の一つで娘である私も当然、後を継がなきゃならない。だけど、私は暗殺という家業を継がずOLという普通の仕事に就いている。
理由は、至極簡単…。


暗殺家業が嫌いだから!!


私の夢は、普通の人と恋愛して結婚。結婚と同時に会社を止め、姑さんと仲良く暮らすこと。




なのに、お見合いと聞いて渋々出てみたら相手はあのイルミ…。


「何でイルミが見合い相手なの!?」


しかも、顔だけはいい幼なじみが見合い相手だなんて…。神様は、私のほんの些細な願いさえ叶えてくれるつもりはないらしい。
叫ぶ私には目もくれず、イルミはお母さんと世間話してるし…。


「私、一般人が良いって言ったよね!?」


何もかも嵌められたこのお見合いに、私は机を壊す勢いで拳を叩きつける。
すると、顔に面倒と書いてある母がこちらを向いた。


「イルミ君は、一般人でしょ?」


あまりの幻聴に、私は動きがフリーズした。

(イルミが、一般人!?だったら、皆一般人になるわ!!私なんか、天使として崇められるわ!)


一瞬で駆け抜けた言葉の羅列に、自分でもびっくりする程冷静に、私ってこんなに頭働くんだ…と思ってしまった。


「ナナシが天使?」


声のする方を見れば、明らかに馬鹿にした目でこちらを見るイルミの姿。相変わらず、読心術で人の心を読むのに長けている。







「とりあえず始めよう」


折角落ち着いてきた思考回路は、イルミにぶち壊された。しかし、ここでくじけるほど私は弱くない。くじけない代わりの八つ当たりは、母に向かった。


「私、暗殺家業が嫌だって言ったよね!?」
「あんたに拒否権なんてあるわけ無いじゃない」
「!?」


私の八つ当たりは母に一蹴された。さらに、母は爆弾とも言える発言をしてきた。


「このお見合い話は、先方からだもの。私達のような二流家系に拒否権なんてないのよ」


母の発言に驚いてイルミを見るも、興味無しという感じで窓の外を見ている。









お見合いも中盤に差し掛かり、当人同士だけの会話へと移ろうとしていた。世にいう『後は若い人だけで…』というやつだ。
(行かないで、お母さん!!)
という祈りも虚しく、既にいなくなっている母を本気で殺したくなったのは、私だけの秘密だ。


「さてと、ナナシ。君に聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「何で、暗殺屋にならないの?」
「!?」


直接聞かれたのは、今が初めてだった。急な問いに、必要以上に吃ってしまう。


「イ、イルミには関係無いじゃない!」
「幼い頃から一緒に訓練してきた仲じゃん。実力だって申し分ないのに、なんで暗殺職業辞めたの?」


なんとかごまかそうとしても、無理なのはわかりきった事実。仕方なく私は理由を説明することにした。


「だって、暗殺屋になったら結婚出来ない…し、暗殺するの得意じゃないから…」
「…ふーん」


イルミに言って物凄く後悔した。私みたいな女が結婚を気にしてるとか知られたくなかった。それに、人を殺すことはできても気配を隠すことが下手な私は、早々に暗殺家業を諦めたのだ。
イルミの返答が何故か怖くて、テーブルの下で私は震える手を握り締めた。


「…つまり、結婚すればいいわけ?」
「そうなるのかな…?」
「他に何が不満なの?」


さらりと斜め上の答えに、私は戸惑いながら頷いた。戸惑いに不服だったのかイルミは、珍しく眉間にシワを寄せた。


「暗殺が得意な女なんて誰ももらってくれないよ…」
「だから、俺と結婚するんでしょ?」


呟いた言葉を聞いたイルミは、事も無げに笑った。その顔が今まで見たどのイルミより格好良く見えたから、気づいたら私の口は恋人からお願いしますと言っていた。



そんなワケで私の婚活は、たった一日で幕を閉じた。

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後書き

最近、"婚活"ってよく耳にしたので…。

201207
改稿&再Up



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