HUNTER×HUNTER
□お菓子の食べ方
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イルミが私の住むマンションに居候を始めてから早一年。
イルミを理解するのに一年は、十分な時間だった。
今日も仕事場から歩いて帰って、パンプスに収まった足は悲鳴をあげる程痛い。
でも、家に帰れば窮屈だった足は解放されて疲れた体は少し癒された。
「イルミー、お菓子買ってきた!!」
イルミに声をかけてから廊下をしばらく歩いて、リビングに向かう。
炬燵でまったりしているイルミの前へ会社帰りに、寄ったコンビニで買ったティラミスを置いて上着を脱いだ。
「ティラミスなんてコンビニにあったっけ?」
「新発売なの!美味しそうでしょ?」
ふわふわのココアパウダーがデコレーションされたケーキに、プラスチックで出来た透明のスプーンを突き立て掬いあげる。
二人で、他愛ない会話を交わしながらチビチビと食べていく。
「それでね…ゔ!!」
「?」
「ゴホゴホ!」
「大丈夫?」
話を盛り上げようと息を吸い込んだら、ココアパウダーまで吸い込んだらしく上手く呼吸が出来なくて噎せた。いきなりの咳にびっくりしてるイルミは、とりあえず私の背中をさすってくれていた。
「…治まった?」
「ん。ありがど」
数分してやっと落ち着いた私は、炬燵の上に散らばったココアパウダーとカップにあまり残っていないココアパウダーを恨めしそうに眺めた。
「急に咳するから頭狂ったのかと思ったよ」
「えっ?」
「いや、なんでもない。で、話の続きは?」
「え?」
「言いかけた内容は?」
言おうとしてはた、と動きを止める。
「…忘れた」
「…」
イルミは心底呆れた表情で、ティラミスを食べ始めた。
その後、すぐに別の話について話した私たちの日常はまだ当分続いていく。
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