HUNTER×HUNTER

□またペンを取りました
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恋とはなんだろう…。


哲学者が書いた本を読んでも、恋愛小説を読んでもしっくりこない答えしかのっていなかった。
ため息をつきながら、図書館をあとにする。ヒールがコンクリートを叩く音が心地好く響いた。




私は、恋した事がない。
『初恋』というものは、したことはあるけれど、アレを恋と言ってもいいのかと疑問になる程おままごとみたいな恋だった。よくいう、子供の独占欲と妄想が織り成す勘違いの物語。
思春期の頃だっていいなと思う人はいたけれど、恋人がいても出来ても、嫉妬の念は抱かなかった。そこから、私の恋という定義は歪みを続けている。


ため息をまた吐いて、夏の暑い日差しを避けるように影になった道を歩く。目の前に、見覚えのある男が見えたがあえて言葉を交わさずに横を通った。


「無視とかひどいんじゃない?」
「離して」
「冷たいなー」


通ったと思った身体は、冷たい手のひらに捕われたまま動けずにいた。こんな暑い日なのに長い漆黒の髪はサラリと流れ、汗一つかかない顔は無表情だった。


「ねぇ、まだダメ?」
「言ったでしょう?私の答えを待ってたらおじいちゃんになるわよって」
「そんなに深く考えなくてもいいのにー」


無表情の彼は、ジーンズのポケットから真っ黒のハンカチで私の頬についた汗を拭う。さりげなくファンデーションが取れないようにしてくれる気遣いに感謝しつつも、彼から距離をとった。


「このままの関係じゃだめなの?」
「んー、ダメ」
「どうしてよ?」
「前も言ったけど、俺ナナシのこと愛してるから」


彼の言葉に、涙が出た。それは、嬉しいとかそんな感情ではなく彼の気持ちが理解出来ない悲しさと悔しいと思う気持ちから。


どうしても恋という気持ちが理解出来ない。幼い私には確かに存在していた恋する気持ちは、思春期を経て少しずつ難解な問題へと変化してしまった。そして、変化したままの問題はしばらく放置され続け、今に至る。


「人を愛おしいと思うことは出来るの。でも、恋するという気持ちは理解出来ない…」
「…んー、良いんじゃない?」
「?」
「気持ちなんて、理解できるようなモンじゃない」


漆黒のよく似合う彼は、似合わない優しい顔で私を抱きしめてくれた。自然と早まる鼓動は、私がイルミという男に恋してるからなのか男に慣れてないだけなのか、まだ分からないけど抱きしめてくれた温かさを心地好いと思った。


「少しだけ、わかるような気がする」
「そう。じゃあ、俺と付き合えばもっとわかるかもしれないよ?」


答えるよりも、抱きしめる腕の力をほんの少しだけ強くした。



またペン取りました
-難解な問題の解くために-


end.
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後書き

友達から恋人になる二人。



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