HUNTER×HUNTER
□譲れない場所
1ページ/1ページ
-作品の前提-
・イルミの奥さんを倒すと、イルミの次の奥さんになれる。
・正式な奥さんになれるまでは、イルミが選んだ挑戦者百人に勝つのが条件。
―…旦那様の妻は、この私で三代目。
バレないように侵入してきた女共は、私に成り代わろうと必死で向かってきた。凡人の中には念を扱う方もいて、一掃するのに少々手間取ってしまう。
私の手には、片手タイプの散弾銃とナイフ。両方とも義弟が誕生日にとプレゼントしてくれた物だ。
使い勝手が良く、重さの割に上々の働きを見せてくれるから私のお気に入りになっている。
「私に勝ち目が無いと理解した方はあちらからどうぞ?」
私の声に、凡人と念を扱うだけの女は出口に向かった。私は、残った女を片付けるべく新しく弾を装填した銃と淡く光るナイフにキスを送ると一気に駆け抜けた。
一人、二人、三人…と倒して、残りは三人になった。
一人は、名のあるハンターで念能力に長けているせいか腕に自信があるらしく不敵に笑ってきた。後の二人は、暗殺家業の娘さん。多分、イルミの奥さんにならなければ、どの道殺される運命の人達。
「中々見所のある方々でしたけど、やはり私以上はいらっしゃいませんね…」
「それはどうかな?」
「イルミさん?どうして、こちらに…」
そろそろこの戦いに飽きてきた頃、仕事で留守の筈だった旦那様が現れて少しだけ驚いた。
旦那様の目は笑っていて、まるで私を試している。勿論、負けるつもりもないが少し拗ねてしまいそうだ。
「旦那様は、私が彼女達に劣るとおっしゃりたいのですか?」
「君が絶対に勝つなんて保証はないって意味だよ」
「保証なら、私の姿を見れば幾らでもつくでしょう?」
私達の会話を聞いていたハンターの女は、目を疑っていた。
戦う事に夢中で、私の姿をまじまじと見ていなかったのだろう。私の服が返り血で汚れていない事に、全く気づいていなかったのだ。
始めに逃げ出した女共は、私の状態に気づいていたのだからこのハンターよりは見所があると言える。ただし、私から逃げ出さなければの話だが…。
「まさか、私の攻撃を受けていないのか!?」
「受けてますよ?ただ、それ程の威力もありませんし、私の念をぶつければ空中で破裂してましたけど」
ハンターの攻撃は、一度だけ生身の腕で当ててみたが腕がもぎ取れる威力すらないので、次からは私の念で相殺していたと説明するのも億劫で、にこりと笑うことだけにしておく。
ハンターは、私に向けていた刃をしまい出口へと向かう。暗殺家業の娘さん達は、いつの間にか消えていた。
「今日もナナシの勝ちか…。つまらないなー」
「明日は、五人程いらっしゃいますよ?」
「明日の子達は、駄目。弱すぎて話にならない」
「ですが、お相手なさったのでしょう?」
「一回したら、弱すぎて興ざめした」
「あらあら…では、明日は期待しないでおきますね」
「そうしとけば?」
旦那様はそう言って私に笑いかけた。私は変わらずの笑顔を向けると、得物をしまった。
得物をしまい、誰もいなくなった部屋から出て、待機していた使用人達に後片付けを任せて午後のお茶をしにバルコニーへと向かう。
今日のお茶請けをミルフィーユと聞いていたから、少し楽しみにしていた。自然と向かう足が速くなる。
「それにしても、ナナシは挑戦者を殺さないね」
「いけませんか?」
「別に、そういうのはナナシが決めることだから悪いとかじゃないけど、何で?」
「…ある程度の洗礼はしますけど、戦意を喪失した者に興味はありませんから、生きても死んでもどちらでも私は構いません」
「でも、後々に命を狙われる可能性が出て来るじゃん」
「二度と私と戦いたいと思わないように、痛めつけてますから」
旦那様は、また笑うと次の仕事へと向かった。見送ってから、バルコニーへと再び足を進める。
バルコニーには、先にお義母様がお茶をなさっているらしく甲高い笑い声が聞こえた。
「またナナシさんの圧勝でしたわね!」
「はい。手間取りましたが、何とかイルミの奥さんの位置は死守しました」
「良かったわ。貴女以外とするお茶は、美味しくないでしょうからね」
メカニックな装置のおかげで、本当に笑っているのか確認しようがないが、お義母様から殺す勢いで飛んできたナイフを受け取って席につく。
「ミルキからの新作よ。感想を教えて欲しいって、言ってたわ」
「わかりました。明日にでも使ってみますね」
「そうして頂戴」
お義母様は、毒入り紅茶が入ったカップに口を添えてまた笑った。
私も微笑み返しながら、毒入りミルフィーユにフォークを突き立てた。
譲れない場所
-イルミの妻は私で最後-
end
-----------------------
後書き
書きたかったものと、全く違う作品になってしまったけど、強い奥様って素敵よね!の精神で頑張った。
.