HUNTER×HUNTER

□揺らめく煙の向こう側
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ー・・・今日も、閉ざされた世界で愛を謳う。




私がいる部屋は、ベッドとティータイム用意のテーブルと椅子しかない。
前はチェストも有ったのだけど、私が万年筆を使ってイルミを殺そうしてから万年筆共々消えた。紙も武器にしようと思えば出来るからという理由で排除され、私の部屋には武器になりそうな物は何もない。強いて言うなら窓ガラスだが、前回それを試したところ真冬なのに窓全開の部屋に戻されて寒い思いをしたので、候補にはならないのである。
人間は学習して行く生き物だ。


そんな殺風景と言わんばかりの部屋で、私は一日中過ごす。
たまに、私を監禁した男とティータイムを取るが、それ以外は何もする事がない。初めのうちは、思うがままに寝れるので天国だと思ったが寝る事には、最初の一ヶ月で飽きた。




ボーッと窓の外を見ていると、部屋の扉をコンコンと叩く音がする。振り返って見れば、拳銃を携えた男が此方に銃口を向けて何か喋っている。折角の客人なので、大事に取っておいたフォークを喉元にプレゼントしてやる。このフォークは、前のティータイムの時に目敏いアイツから目を盗んで手に入れた貴重な武器だ。そのプレゼントを受け取った男は、奇妙な唸り声を上げながら絶命した。代わりに、拳銃を貰う。
ここに来るまでに、何発か打ったのだろう…。銃には、後一発しか弾が入っていなかった。

「他に持ってないの?使えないなー」

足で、倒れた男を触診しても、それらしき物は出て来ず…。安全装置を嵌めてから太もものガーターベルトへと挟んで、上からブリブリのドレスを被せる。右太ももに、若干の違和感が生じるが仕方ない。
このドレスも動きにくいから、飛び道具の方が楽だろうとは思う。





客人が来て、数秒後に私を監禁した男が来た。
無表情を貼り付けたような男の顔は、もう何度も殴り倒しているのに綺麗だ。

「ケガしなかった?」
「したように見える?」
「見えないね」

監禁した男…イルミは、絶命した男のフォークを喉元から抜き去って男を担ぎ上げる。

「棄てて来る」
「宜しくー」

きっと、フォークの事について聞きたかったんだろうけど、イルミはその言葉を飲み込んだようだ。
聞かれたら、アンタを殺すためだよと笑ってやったのに。つまんない…。



私以外、誰もいなくなった部屋で棄てられるであろう男の生い立ちを想像する。…どうせ、ロクでもないのだろうけど暇なんだからしょうがない。
つらつらと、色んな想像をして想像が出尽くした所で、また扉の叩く音が聞こえた。振り返らずに銃を撃てば、空気が少し揺れた感覚がした。

「残念…。銃でもダメでしたかね?」
「俺相手に、銃は効かないって知らなかった?」
「知りませんでしたね。結婚して、直ぐにここへと監禁されましたから。アンタの事なんてわ気違いとしか知りません」
「それで、充分じゃない?」

冗談に本気で返されて、やっぱりコイツは気違いだと思う。
結婚して早々に、監禁されたら普通そう思うだろうけど…。





そう。
私は、私を監禁した男と婚姻を結んだ関係だ。
まぁ、出会ったのは盛大な結婚式の式中で初めて顔合わせをしたのだが、何故か式が終わって私は監禁された。
多少の事には、家系が家系なので理解していたが、コレは無い。
コイツは、変態で気違いで馬鹿だ。頭良さそうな見た目してる癖に馬鹿なのだ。…いや、馬鹿というよりは天然か?
どの道、阿呆で有ることに変わりない。





「いい加減、ここから出していただけないですかね?」
「ダメ。…そうしたら、逃げるでしょ?」
「逃げるって、私が何処に行くと言うんです?」
「そんな事言ってもダメなものはダメ」

私と彼の問答は、当てもなく続く。
私は、ここから出して欲しい。
彼は、ここから私を出さない。
問答は、限りなく平行線を辿って行ってる。そして、最後に彼は言うのだ。






『俺を好きになるまでは、出してあげられない』と…。



end





ーアトガキー
タイトル関係ねぇー!

きっと夢主も、イルミが好き。一目惚れ。だから、逃げやしないよと言外に伝えてるけど、これが初恋のイルミ兄様は理解してくれないっていう模様です。
まぁ、夢主はこの現状でも満足だけど出来るなら自分も夫…イルミに近づく雌豚共を駆逐したいのでお外へ出たい…。なんつって!
てへぺろ!


イルミ兄様でシリアスを期待してらしたK様に感謝。

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