短編

□私、馬鹿は嫌いなの。
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私、馬鹿は嫌いなの。

外に出れば雨。
窓の外を見れば雨。
雨、雨、雨。雨が降っている。
雨が降れば、誰だって気分が滅入ってしまう。
それなのに、天草は。
「・・・・・・・・・・・・天草。少し静かにしてくれない?」
いつもの様に、陽気に鼻唄なんて歌っている。
「あ、すいません。
気に触りましたか?」
「・・・・・・・・というか、雨だから苛々してるのよ」
窓の外に目をやると、大粒の雨がバラバラと降っている。
「――――――――――それにしても、凄い雨ですねェ」
「本当よ」
はぁ、と深い溜息。
勢いを増し続ける雨は、一向に止む気配が無い。
そして、小さく聴こえる鼻唄。
「ねェ、天草?
私、馬鹿は嫌いなのよね」
「え?
あ、まさかお嬢、俺の事言ってます?」
「どうだか」
「それは違いますぜ?
だって俺が馬鹿なのはお嬢の前でだけですから」
ニッ、と天草が笑うと、縁寿は天草から目を逸らし、言った。
「・・・・・・・・軽蔑するわね」
「やめてくださいィィィィィィ」
くすくす、と縁寿が笑う。
ヒャッハ、と天草が笑う。
「じゃ、もっと利口になりなさいよ」
「お嬢がそう言うのでしたら――――・・・御意です」
馬鹿が嫌いなら、利口になれば良い。
利口が嫌いなら、君の思い通りに―――。


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