短編

□奪えよ、乙女
1ページ/1ページ



奪えよ、乙女

大好き、なんて言えないから。
愛の告白も、私には出来ない。
だから、ありったけの勇気を振り絞って、愛を伝えたいと思ったの。

「お嬢―――、」
「な、によ?」
明らかに動揺する縁寿。
それに気付いたのか、一瞬、天草の眼から光が消えた。
しかし、すぐに天草はいつもの様にニコリと微笑み、口を開いた。
「―――――愛してますよ」
「・・・私は――――――、
愛してなんか無い、わよ」
天草が軽く口笛を吹いた。
「じゃ、お嬢。
俺、ちょっと小此木さんに呼ばれてるんで―――」
「ぇ・・あっ・・・!」
「お嬢・・・・・・・・・・・・・・・?」
気が付けば縁寿は、天草の服の裾を引っ張っていた。
不思議そうに首をかしげた天草が、どうしましたか、と言って縁寿の正面に膝立ちになる。
「ぁ・・・わ、私・・
上手く言えない・・・し、」
「――――――、
何をです?」
真っ赤になった顔を更に紅く染め、縁寿は言う。
「・・・その、・・・
・・愛の、告白・・・とか」
目を丸くさせた天草の首筋に、縁寿がキスを落とした。
すると、天草は縁寿の頬を両手で包み、笑って言った。
「お嬢、すごい可愛いですぜ?」
恥ずかしさの余り、天草の首筋に顔を沈めて行く縁寿。
それは天草の理性を掻き立てる事になるのだが――――
今はまだ、知らないままで。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ