□吐息禁止令
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吐息禁止令

「ちょっと・・・天草?
あ――ま――く――さ―?」
縁寿が懸命に天草を呼ぶ。
時に身体を揺らし、時に耳元で囁き。
もう昼過ぎだというのに、天草が一向に起きないのだ。
きっと昨日夜更かしでもしたのだろう、と放っておこうとした縁寿だったが。
――――やはり心配になってしまい、かれこれもう小一時間程、先述の行為を繰返しているのだ。
「・・・・起きないわね・・」
胸に耳を当て、呼吸をしているかも確かめた。
「息もしてる・・・」
目を開かせてみたり、額に手を当てて熱があるのかも調べた。
やはり、ただ寝ているだけの様である。
「駄目ね・・・・諦める事にするわ。」
縁寿が天草の傍から去ろうとした時だ。
縁寿の身体が天草の元へと引き寄せられた。
「え・・・・・?」
縁寿が天草の横へと倒れ込む。
身体を床へ軽く打ち付けたが、頭は天草の腕により、衝突を回避できた。
「ちょ、ちょっと!?
天草、一体何時から起きてたのよ!?」
「お嬢が俺の胸に耳を当てた時くらいからですね」
そう言うと、天草は縁寿の頬にキスをした。
「やっ・・・
何すんのよ!?」
不敵な笑みを浮かべ、天草は答える。
「お嬢、心配してくれてたじゃないですか。
お返しですよ、お返し!!」
「馬鹿じゃない・・・・
・・・・・・!!」
言葉を言い終える前に、縁寿の唇は塞がれた。
いきなりの事で動揺する縁寿は、ジタバタと抵抗する。
「・・・っふ・・・・
あ、ま・・くさぁ・・・
やめ、っ・・!!」
天草は何も言わなかった。
その口付けは、まるで吐息禁止令。
「・・・・・・・っふ・・・」
縁寿も、その快楽へと身を任せていった。


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