その他

□赤い雪
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暗闇の中で雪が、降っていた。
「わぁ…」
不思議だ。雪なんて珍しくともなんともないのに、何故か心が暖かい。なんでだ?こんなに懐かしく思うのは

そして白い白い雪はやがて


















赤くなる








ボタッ ボタッ
「ファ…ザー?」
血まみれのファーザーは、泣いているようで、笑っているようで、怒っているようにも見えた。


「テイト…」

やがてその姿はあやふやになり、ミカゲの姿に変わっていく。
「ミカゲっ」
思わず走り出して、手を伸ばす。でもミカゲには一向に手が届かない。むしろどんどん遠く、闇の中に埋もれていく。
赤い雪はさらに多く、さらに色濃く降っていた。

俺が必死で追いかけてるのに、ミカゲは笑って俺を見ているだけだ。

「テイト。俺さ、今でも思ってるよ。」
ミカゲの口が開く













「お前のせいで殺された、って。」
「っ!!!!」

…違う、これは夢だ。


するとミカゲの隣にアヤナミが現れた。
「この少年の言う通りだ、テイト=クライン。貴様は一体何人の人を殺してきたのだ??」













「っ!!!」

ガバッ





テイトはすごい汗をかいていた。
「はっ…はっ……っ…」
息を整えていく。隣では、フラウがすーすーと寝ていた。
(そっか…ここは…)
ここは旅の途中で立ち寄った街の宿だった。



「さむ…」
さっきまで汗だくだったのに、汗はもうすっかり引いていた。
そしてたまたま、テイトは窓を見た。






降っていたのは、 雪


『貴様は一体何人の人を殺してきたのだ?』





「うあ゛あ゛あああぁぁぁっ!!!」
テイトは何かが壊れたように叫んだ。

「どうした!?」

ガバッと、寝ていたフラウも何事かと起きた。
テイトは床に踞っていた。
「どうした、テイ━━━━」


ぽろぽろと、テイトの目からは涙がこぼれ落ちていた。
「な…んでもなっ」

(俺が大切に思ってた人は…皆っ)

「んな顔しといてなんでもないわけあるかっ。何があった、言ってみろ。」

それでもテイトは頑なに首を振った。


「…分かった。じゃあ、言いたくなったら言え。」
そう言うと、フラウはパサッと毛布をテイトの肩にかけた。

(言えるわけないだろっ…俺が泣いてる理由は……お前を失いたくないから。………………………………好きだから)

自覚したのは、さっきの夢の中だった。消えて行った「大切な人達」

今一番失いたくないのは、他でもない、フラウだと。




(でも今さらっ)




今さら「好きだ」といった所で状況は変わらない。断られれば今まで通り。了解されてもテイトには探さなければならないものがある。

結ばれたところでハッピーエンドなんて訪れない。それがわかってしまった。

(言えるわけないだろ…)




雪は、まだ降り続いていた。

END





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