愛を惜しみなく


I can not tell you
  just how much I need you.

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人間の身体から出てきた虫が、天の神にその悪業を報告するという啓蟄(けいちつ)の晩、夜明かしすべく酒宴が続く。

「皆が笑って暮らせる世じゃぁ〜。武士ぃも、町人もぉ、な〜いっ!」

「れもぉ、祭りはぁ〜・・・」

龍馬と慎太が、呂律(ろれつ)がかなり怪しくなりながらも、幸せな世とは何か、言い合っている中、先生が座を外す。

「ん゛? 武市は何処にぃ行ったがかぁ?」

「・・・風に当たりに行かれた」

「武市しゃん、酒に強くないっスかりゃね」

納得したようだが、実のところ、先生が付き合いきれないと思われたところまでしか、俺には分からない。

「しょれにしても、さっきの姉しゃん!」

「最後に、武・市・だ・け・に・声ぇ〜かけて行きおった」

「オレもぉいたっスのにぃ〜」

「わしじゃっておった〜」

・・・「俺も、いたのだが」と言いかけて、止めた。
あいつから目が離せないのは、皆同じで。
物怖じせず真っ直ぐで、義理に堅(かた)いあいつには、俺でさえ一目置かざるを得ない。
そして、先生から学ぶべく、常に先生の一挙手一投足に神経を傾けている俺だけが気付いていることと思っていたのだが――。

「武市ぃが抱え込むのも、仕方にゃいことじゃのぅ」

「姉しゃんを見てれば、分かるっス・・・」

酔っ払い達は、妙にしんみりと言ったのだ。
先生とあいつは、相思の仲だと―――。

"I can not tell you just how much I need you."了
2011.02.23.up at web拍手ss
2011.04.28.up at 愛を惜しみなく



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